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派遣勇者の世直し観光記  作者: あおまる軍曹
第一章【レグナ王国編】
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第035話「派遣勇者と研究結果」

第一章【レグナ王国編】

第035話「派遣勇者と研究結果」




 出迎えてくれたルードルの案内で俺達は王都魔導研究所に入る。

 中を歩いていると廊下から見える中庭では魔法の詠唱実験のようなものをしているのだろうか数人の研究員らしき人物達が集まって魔法陣の構築を行っていた。

 それを見てルードルが説明を始めてくれる。


 「今、中庭で彼らがやっているのは複数の魔法使いによる魔法詠唱実験ですね。」


 「どんな実験なのですか?」

 「シンキチ殿は例えばレベル二十の魔法使いがレベル二十で詠唱できる魔法を一人で一発発動させる場合とレベル二十が二人で一発詠唱する場合、後者は消費魔力も発動時間も少なくなる事はご存知ですか?」

 

 「えぇ。」


 「あれはその魔法の合同詠唱の応用になるのですが、合同詠唱をする事で本来一人では詠唱できない高位の魔法を詠唱できないか実験しているのです。」

 

 「えっ!そんなことが出来るんですか!?」

 あまり魔法に詳しくないシロが思わず声を上げた。


 「例えば回復魔法のヒールが使える魔法使いが二人で力を合わせて一つのヒールを発動させると本来の消費魔力や発動時間の半分くらいで済むんだよ。」


 「魔法というのは本来魔法構築用の魔法陣を知っていても発動に必要なレベルに到達していないと詠唱は失敗します。これは魔法詠唱にはその魔法に対する知識だけでなく、魔力や技術が必要だから失敗すると考えられています。しかし合同詠唱によって複数人で足りていない部分を補えれば高位の魔法でも発動できるのではないか?という観点で実験しているんです。」


 (でもその位の考えなら誰かがすでに試してそうだよな…。)

 俺の考えが表情に出ていたのか、ルードルは説明を加えた。


 「実際、このコンセプトの実験は過去にされています。今中庭で行われているのは魔法陣構築までは一人でもその魔法を発動できる高位の魔法使いが行い、最後の発動までの工程を低位の者が実施して魔法がうまく詠唱出来るのか?出来るとしたらどの程度のレベル差なら成功するのか、といった内容になりますね。」


 「なるほど。」

(実際これが成功するのなら高位魔法で消費する魔力を他の魔法使いが肩代わりすることで節約できるかもしれないのか。)


 「もしそれができるならシンキチの凄い魔法をアタシやルーちゃんでも発動できるかもしれないってことなんだね!」


 「ほう…。シンキチ殿は魔法もできるのですね。」


 「この子たちと旅する前は一人でしたから、何かと魔法も要り用で鍛錬しました。」


 「あとで是非お手並みを拝見させてもらいたいですね。」

 

 そう言ってルードルは扉の前で立ち止まる。


 「ここが私の管轄する研究チームの部屋になります。例の杭はここで我々が調べてました。どうぞ。」


 中に入ると男女五人の研究員が待っていた。それぞれが一人づつ挨拶をしていく。ルードルのチームはルードルを含めて貴族出身が三人、平民出身が三人の計六人の研究チームらしい。

 ここレグナ王国の人間種は名前でその人が平民か貴族かが大体判断出来る。例えばアルメイのように名前が一つなら平民。二つなら領地を持たない爵位の低い貴族やそれに準ずる人物、三つなら領地をもつ爵位の高い貴族、王族は名前は四つになる。といってもこれはレグナ王国の【人間種】の風習なのでエルフであるルーの名前は該当しない。


 後で聞いた話だが、王都の研究所で平民出身者が登用されるようになったのはごく最近になってからのようだ。現在でも平民出身者が登用される事をあまりよく思っていない古株の貴族研究員も多いらしく、平民出身者の登用はチームリーダーが希望した場合に優秀な者を雇用して自分のチームに加えるのだそうだ。


 「私は魔法を研究するのに出身や種族は関係ないと思っているのですが、貴族だけで研究所を動かしていた時代の人達はあまりそうは考えていない様です。」


 そういうルードルの表情は少し残念そうだった。確かに我流でも強くなれる剣技等に比べ魔法は才能と幼少からの訓練でかなりの差が出る。魔法習得の勉強や訓練は貴族のように生活に余裕がある者の方が高位の魔法使いになれる可能性は高くなるのだ。

 だからこそ魔法というのは貴族が上手く使えるものといったプライドのようなものもあるのかもしれない。


 (俺のように最初からある程度力を貰えていなければ平民の生まれで高位魔法使いになるのはなかなか難しいだろうな。)




 研究室のテーブルに座った俺達の元にルードルは例の杭を持ってきた。


 「さて、今回シンキチ殿に来てもらったのは協力していただいた貴方にこの杭に関して分かった事をお伝えしたかったのと、お聞きしたい事とお願いしたい事があったからです。」


 「聞きたい事とお願い…、ですか?」


 「えぇ、まずこの杭に関してなのですが先端の尖った部分から地面の魔力を吸い上げて杭の表面部に構築された魔法を発動する仕組みになっています。その発動する魔法というのは皆さんが目撃した魔物を強制的に成長させる類のモノの様です。しかしこの杭の表面部に構築された魔法は我々の知る魔法の構築方法と全く異なる事に加えて刻まれた文字も見たことのない文字でした。」


 「この文字については現在の主要な国家使で用されている言語でない可能性が出てきているので、今後は種族研究者や考古学等の学者を呼んで別種族、あるいは古代の魔法道具の可能性という視点で調べてみるつもりです。」


 (この短期間で杭の核心に迫りつつある。流石は王都の研究者といったところかな…。)


 「なるほど…。珍しい道具なのですね。」

 「そうですね。研究所に保管された魔法や魔法道具の資料も調べましたが魔物を強制的に成長させたりするような魔法や魔法道具を記載する書物はありませんでした。」


 「そんな重要な情報を私達のような旅人に話しても大丈夫なのですか?」

 「この杭に関してはすでにオートランドの工場関係者の方々も目撃していますから極秘という事ではありません。まぁ、皆さんは意味もなくこの情報を広めるような方々ではないと思っておりますので。」


 「そうでしたか。この杭の事は軽々しく言いふらしたりしませんのでご安心ください。それで私達に聞きたい事というのはなんなのでしょうか?」


 「…。それはですね。旅をしている皆さんがこの杭に刻まれた解読不能の文字に見覚えが無いか、という事ですね。それに皆様の一団は人間種、エルフ族、獣人族の様ですのでそれぞれの種族でこういった文字が使用されていないか?と言うのをお尋ねしたかったのです。」


 「少なくとも私は見た事のない文字ですね。皆はどうだい?」

 「えるふのことばじゃない。」

 「アタシが知る限りドワーフ族の言葉って訳じゃなさそうかな~。」

 「私も村で生活している時にこんな文字は見た事ないですね。」


 三人娘もそれぞれ自分の種族の言葉ではなさそうであることを口にする。


 (まぁ、古代文明時代の魔族の文字だからここにいる三人が見覚えはないだろうな。)


 「そちらのお嬢さんはドワーフ族だったのですね。」

 「お!お嬢さんだなんてそんな…。」


 気品があり、顔も整ったルードルにお嬢さんと呼ばれ赤面するアルメイ。


 「アルメイは1/8がドワーフなんです。」


 「そうでしたか。ですがエルフ族、ドワーフ族、獣人族と主だった種族の文字でないとなるといよいよ古代文明時代の言語の可能性が高まりますね…。」


 難しい表情で考え込むルードル。彼の部下も心なしか険しい表情をしている。


 「主任。古代文明時代の資料は研究所にはほとんどありません。どうしましょうか…。」

 「やはり先日依頼した考古学の学者さんに早めに来てもらわなければいけませんね。あとは博物館に古代文明時代の資料がないか聞いてみましょう。」


 「力になれずすいません。」

 「いえ!こちらも知っている方がいればラッキー程度に考えていましたのでお気になさらず。」


 「それにこうなってくるとますます皆さんにお願いしたいと思っていた事の重要度が上がりました。」

 「そういえば私達にお願いしたい事というのは。」


 「はい。この王都の北側には古代文明時代の遺跡があるのです。このレグナ王国建国の礎となった国の都市があったとされています。そこにウチの研究員を派遣したのですが、当然魔物が出るのでその護衛をお願いしたいのです。」


 「護衛は構いませんが、オートランドの事件の時のように騎士団の方と一緒に行かれたりはしないのですか?」


 「レグナの騎士団は原則外敵から王都や国を守ることが仕事になります。オートランドの時は王命が出ましたので例外的に王都を出て行動を共に出来ましたが、今回のようなケースでは騎士団の力を借りるのは難しいのです。それに極秘ではないとはいえ杭の事は出来るだけ不特定多数の人に知られたくないので、冒険者ギルドに依頼は出さずに直接皆さんを護衛として雇いたいのです。」


 「…あっ!勿論研究所から報酬はお出ししますので。」


 そういうとルードルは一人の研究員が持ってきた依頼書を俺に手渡す。依頼書を読むとなかなかいい金額が記載してある。


 (流石は国の研究機関だな!報酬はかなり良い!)


 「そういうことならご協力いたしましょう。皆もいいかな?」


 「おー!」

 「古代の遺跡とかワクワクするね!」

 「が、頑張ります!」


 即決した俺達を見てルードルや研究員達も安堵している様だった。


 「それではこの件に関しての報告とこちらからの依頼のお願いはこれで終わりになります。それでは中庭の一角に魔法を行使する際に利用する広場がありますのでシンキチ殿の魔法を見せていただきましょう。」

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