第033話「派遣勇者と収集家」
すいません。投稿予約ミスってました…。
第一章【レグナ王国編】
第033話「派遣勇者と収集家」
「うーん…。ウチで取り扱ってる軽装武器はダガーやショートソードだねぇ。」
「盗賊系かい?このナイフやククリ刀なんかどうだ?」
「最近の盗賊職の人気は双剣だぜ!いいのあるぞ!」
俺達は昨晩のアルメイの勧めでシロの武器を見るため王都の武器屋を回っていた。しかしどこの武器屋でも軽装装備はナイフ系ばかりでなかなかシロに合う武器は見つからない。
「なかなかシロの戦闘スタイルにしっくりくるものってないもんだねぇ。」
「前衛で軽装職ってなかなか珍しいからね。前衛は基本ダメージを受ける事が前提の職が多いから防具も武器も大型でしっかりしたタイプが多いんだよな。だから軽装武器で近距離用となるとメジャーな盗賊職のナイフ系やショートソードになってしまうんだろうな。」
「ゆみやとかじゅうはだめなの?」
「んー。シロの身体能力で遠距離武器は少しもったいないし、シロも遠距離攻撃は苦手みたいだからな。」
「あの…。私は爪もありますし、無理に武器を買わなくてもいいんですよ?」
「そう言っても今後もっと大きなリザード系や固い魔物と遭遇したときに自前の爪では難しくなってくるからね。今のうちにシロも武器をそろえておいた方が良いと思うし、もう少し店を回ってみてから考えようか。」
「なんかごめんなさい…。」
シロは俺達に気を使ってかしきりに謝ってくる。
「朝も言ったけどこれはアタシ達がしたくてしている事なんだからシロが謝る事なんかないんだよ?」
「シロのぶき、みつけたい。」
「そうさ。もうシロは俺達の仲間なんだからそういう所で気を使う必要はないさ。」
「だからシロもアタシたちに気を使って武器選び妥協しちゃだめだからね!」
「あぁ。武器は自分と仲間を守るものだから必ずしっくりくるものを選ぶんだよ。」
朝食時に今日はシロの武器を見て回ると説明した時にも説明した事なのだが、武器選びは納得がいくまで続けると言うのが俺の持論だ。半端な武器選びはこの世界では自分だけでなく仲間を危険に晒してしまう事だってある。これは武器屋の娘であるアルメイも同調してくれた。最初は遠慮がちであったシロもルーやアルメイ達後衛に迷惑を掛けないためにも良い武器を見つけようという俺達二人の説得もあって武器探しに前向きになってくれたのだった。
しかしもう何件も武器屋を見ているがどこも似たような武器を置いているだけで決定打に欠けるという感じだった。
「午後はどうしようか?」
昼食を食べながら午後の相談をする。
「目についた武器屋は大体見た感じだよね。」
「なかなか決まらなくてごめんね?」
「だいじょうぶ。シロのぶきみつかるといいね?」
「そうだな。」
「なら冒険者ギルドで聞いてみない?あれだけ色んな冒険者がいるならアタシ達がまだ行ってない武器屋を知ってる人もいるかもしれないよ!」
アルメイの提案に俺達は午後からギルドで情報収集を行うことにした。
「ダガー以外の近接軽装武器を売ってるお店?ごめんなさい思いつかないわ…。」
「そこの獣人の嬢ちゃんの武器か。俺も獣人族だから気持ちは分かるが若いうちにダガーやソードの使い方覚えさせた方が良いと思うぜ。」
ギルドで女性や獣人の冒険者に聞き込みをしてみるものの、やはり皆小型のナイフやソードを使用していてそれ以外の武器の情報を持つ人には出会えなかった。
結局ギルドの聞き込みは無駄足となってしまったので俺達はトボトボとギルドを後にした。
「そこの嬢ちゃん達!ちょっと待ってくれんか!」
「ん?」
ギルドを出て一度宿に戻ろうと大通りを歩いていると、後ろから声を掛けられた。
声を掛けてきた初老の男性はアルメイとルーを呼び止めたのだった。
「アタシ?」
「ルー?」
「そうだ!嬢ちゃん達だ!ちょっといいかね!」
男性に敵意や悪意は感じないが、突然少女二人に声を掛ける男性に俺は割って入る。
「すいません。私の仲間になにかご用でしょうか?」
「おぉ!貴方がリーダーかな?突然すまんかった。儂はその子らが持っている武器がつい気になってしまってな。」
そういうと男性はルーとアルメイが装備している銃を指差す。
「こんな往来で立ち話もなんだからな。この通りのすぐ裏が儂の家になっとるから寄ってくれんかね。儂は武器が好きでな。」
シロの武器探しがもはや八方塞がりになってきていた俺達は、この自称武器マニアらしき男性についていくことにした。
「ここだ。さぁ入ってくれ。」
そう言われて案内された彼の自宅は一般街区でも一際大きな屋敷だった。
「おっきーいえ!」
「シンキチ…。あの人何者なんだろ?」
「お金持ちなんでしょうか。」
「一般街区とはいえこのサイズの家を王都で持てるならそれなりの商人とかかもな。」
応接室に案内され、ソファーに座ると男性は自己紹介を始めた。
「儂はアンダーソン。今は引退した身だがが元は王都の冒険者ギルドでギルド長をやっておった。今は若いのに引き継いで余生をゆっくり過ごしている。」
(王都の元ギルド長だったのか、冒険者ギルドの本部でギルド長をやっていたのならこの豪邸も納得がいくな。)
俺達も自己紹介を済ませると、アンダーソンは話を続けた。
「現役の頃から武器や防具が好きでな。とりわけ珍しい武器なんぞを収集するのが趣味で、引退後は特にそこを楽しみに生きておる。それで見たことのない武器を嬢ちゃん達が担いでいるのを見かけて思わず声を掛けさせてもらったわけだ。」
「なるほどね~。これはアタシのオリジナルだからね。」
「やはりそうか!全く見た事が無い形状だ!詳しく見させてくれんか!」
「アルメイ。説明してあげたらいい。」
「任せて!」
アルメイは自分の作成した武器に興味を持ってくれたのが嬉しいのかアンダーソンに銃の仕組みや使い方これまでの経緯を楽しそうに説明した。
「なるほど!弓矢よりもこの弾が小型で大量に携帯できるのは素晴らしいな。しかしやはり販売品ではなかったか…。」
「そうなんだよね。これもアタシとルーが使いながら改良している途中のテスト品だから…。」
「う~む…。世界に二丁しかないと聞くとなおさらコレクターの火が着くの…。」
「ならどうだ?儂はギルド長なんぞをやっとったからこの街では顔が効く。鍛冶屋や武器屋を使ってもう一丁作ってくれんか?当然製作費は儂が持つ。」
アンダーソンの提案にこちらからも一つお願いをしてみた。
「そういう事ならご協力いたしましょう。その代わりと言ってはなんですが俺達からも少しアンダーソンさんにご相談がありまして。ウチのシロは獣人で今武器を探しているのですがどこの武器屋もダガーやショートソード、双剣しか置いていないのです。彼女は爪を使った戦闘スタイルなので何か良い武器を知りませんか?」
俺の相談に少し考えるような素振りを見せたアンダーソン。
「…おぉ!そういう事なら面白いもんがある!ちょっと待っとれ!」
そう言って部屋を出て行き、戻ってきたアンダーソンは大きな手のような武器を持ってきた。
「これは昔、豹の獣人族の冒険者が使用していたものでな。鋼鉄製の爪だ。冒険者の引退と同時に儂が買い取らせてもらったんだが、この形なら嬢ちゃんの戦闘スタイルを変えずに装備できるんじゃないのか?」
「着けてみてもいいですか?」
「もちろん。」
「わぁ…。これなら今まで通りの動きで攻撃できそう。」
「でも少し大きくない?」
「うん。これの持ち主は男性でしたか?」
「そうだ。かなり大柄の男の獣人だったからそれをそのまま使うのは厳しいだろう…。そこでだ!儂はアンタらから銃のアイデアを一丁分譲ってもらう代わりにこの爪のアイデアを一セット分譲ろう。それで儂が懇意にしている鍛冶屋でそれぞれ一つづつ武器を作るのはどうだろう?」
「乗りましょう!」
「やったね!シロ!」
「わーい。」
「ありがとうございます!」
「交渉成立だな!」
こうしてシロの武器がアルメイの武器とのアイデア交換という形で無事に手に入ったのだった。
初執筆作品です。
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