第003話「派遣勇者とエルフの里」
第一章【レグナ王国編】
第003話「派遣勇者とエルフの里」
「もうすぐ我々の里だ。」
「私が先に里へ戻って長老様に会ってもらえないか話してくるわ。このままシンキチと一緒に行くと里の皆がビックリしてしまうかもしてないしね。」
「リム頼んだよ。」
「お願いします。」
そう言ってリムは颯爽と里の方へ駆けて行った。
「本当にエルフの方は身軽ですね。」
「森での生活を通して自然と身につくけどな。森での移動は木々を渡れるだけで安全性も速さも段違いに良くなってくる。」
「ルーもぴゅーって走りたい。」
「ルーもあと百年もすればできるようになるさ。」
「やはりエルフは長命なんですね。」
「そうなのか?あまり長く生きているという感覚はないが、人間は寿命が短いらしいな。」
「俺の年齢は二十五歳になりますが、お二人はおいくつなんですか?」
「俺とリムは百七十六歳、ルーは四十五歳になるな。人間はたった二十五年でこんなにでかくなっちまうのか。」
(やはりと言うべきか、全員年上だった…。)
俺の肉体は転生した二十五歳で止まっている。勇者は時間の理が一般から外れるのだそうでその証拠に 前の世界の救済には十年ほどが掛かったのだが歳を一切取らなかった。
(この世界では勇者じゃないから年齢を重ねるようになるんだろうか…)
「里の入り口が見えてきたな。リムもいるな。」
「みんないる…。」
「やけに人がいっぱいいるように見えるのですけど。」
「リムが先に言ってシンキチの事を話したから皆見に来たんだろうな。里のほとんどの者が人間と接触するのは今回が初めてになるだろうからな。」
遂にエルフの里へ着いた。マップには【アリアドールの森】とある。
入り口にはざっと二、三十人程のエルフ達が出てきていた。
その中から二十代くらいの男女のエルフが駆けてくる。
「「ルーっ!!」」
どうやらルーの両親の様だ。
「ダグ、シンキチ、長老様が会ってくれるって。このまま行こ。」
リムがそのまま俺たちを里の中へ誘導する。
「貴方がルーを助けてくれた人族だね。私たちはルーとダグの親だ。本当にありがとう…。長老が待っているからお礼は後で改めて言わせてくれ。家で待っているよ。」
「ということだシンキチ。まずは長老の家へ行こう。」
「シンキチ…。こっち…。」
ダグ、そしてルーに手を引かれ里の中を進んでいく。
「本当に人間だ…。」
「人間がルーちゃんを助けたそうよ。」
「良からぬ事を考えてなければいいが。」
「でも、ルーも懐いているみたいだな。」
「信じられん…。」
周りのエルフ達もざわざわと話しているのが聞こえるが、やはり警戒しているエルフもいるようだ。
ただルーが思いのほか俺に懐いてくれているのでそれが良い方向に向いているのは助かる。
里の中に入ってみて感じたのは、アリアドールがファンタジーに出てくるエルフの里そのものといった感じだ。
森の中に建造された里は、地上に立つ家と樹上の家が見事に調和している。
大樹をくり抜いている樹内家屋や木の形状を上手く活用した樹上家屋等、どういった技術で作られているのか不思議になるような家々だ。
そして当たり前なのだが、右も左もエルフ。
外に出てきて此方を見る者や家の中から覗く者、里の中に人間がいるというのはそれほどにも珍しいのだろう。
「あの奥の大樹の上にあるのが長老様の家よ。」
見上げるような木の上には少しだけ立派な家が建っている。
「ずいぶんと高い位置にあるのですね。」
「長老様が家を作った時はそんなに高くなかったそうよ。木が成長して今の高さになってるんですって。」
壮大な建築計画だ。
「長老の家にはあの階段で行く、少し歩くが我慢してくれ。」
そういってダグの指差した先には大樹から生えるようにできている階段があった。
(手すりも柵もない…。高所恐怖症の人は訪ねることもできないな…。)
三人のエルフと共に長老の待つ家まで歩く。
長老の家に着くとそのまま家の中へ入るよう促された。
中で待っていたのは想像とは全く違う長老の姿だった。
「このような高き大樹の家までわざわざすまなかったの。儂はアリアドールの森、アリフェリアの祝福を受けし最も長く生きるエルフ、ナルミアン・ジン・アリアドール。人族の若者よ、此度は我が氏族のアレミア・ルー・アリアドールを魔物の群れから救っていただき誠に感謝している。」
挨拶を始めたアリアドールの長老は、おおよそ木が大樹へ成長するほどの年月を生きている様には思えない人間でいう所の四十代くらいの男性だった。
見た目は自分の親より若く見えるぐらいなのに口調が完全に老人でギャップがすごい。
しかし長老の瞳は長い年月を生きているからなのか、近くを見ているのにどこか遠くを見ているような、若々しさのない不思議な瞳をしている。
「私の名前はシンキチといいます。こちらこそ人間である私を里に招き入れていただき感謝しております。」
「シンキチ殿、同胞の幼き命を救ってくれたのだ。種族は関係ない。むしろ里の者が怪訝な目でそなたをみていたじゃろう。そなたに非はないのに申し訳ないことだ…。」
「ダグ達から話は聞いておりましたので…。里の皆様がそのように思うのは仕方がないかと思います。」
「恥ずかしい話だが外の世界を詳しく知らぬ里の若者らは、帰還者が見た世界の悪しき部分のみを人族の印象の全てと思ってしまっておる。どの種族にも光と闇の部分はあるものなんじゃがの。」
たしかにエルフ達の警戒心はかなり過剰なくらいだったが、彼らの事を考えれば人間に警戒心を持っていた方が良いくらいだろう。
「俺たちもシンキチに会って人間のイメージはだいぶ変わったかもな。」
「えぇ、私たちとあまり変わらないのだもの。ビックリしたわ。」
「シンキチ…。優しい…。」
「そうじゃ、人族は我らエルフよりも圧倒的に数が多い。だからこそ悪しき者も多いがシンキチ殿のように心優しき者もおる。儂らが常日頃言うように、偏った知識だけでは誤った考えになってしまうのじゃ。」
なんだかむずかゆくなる。
「とにかく、シンキチ殿がこの里に滞在することに関しては何の問題もない。里の者にも儂の方から問題ないことを伝えておこう。滞在はアレミアの家ということでいいのだな?」
「あぁ、森で野営するなんて言ってたからな。ウチに来てもらうことにした。」
「シンキチとごはん食べる…。」
「何もない里ではあるがゆっくりしていくと良い。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ、ウチに行きましょ!」
長老の家を後にし、ダグ達の家へ向かった。
「ただいま。」
「「おかえりルー。ダグとリムもお疲れ様。」」
家では里の入り口で会った両親が待っていた。
「シンキチです。短い間ですがお世話になります。」
「シンキチ君だね。私はアリアドールの森、アリフェリアの祝福を受けし、アレミア・デイ・アリアドール。ルーとダグの父だ。」
「私はアリアドールの森、アリフェリアの祝福を受けし、アレミア・ルル・アリアドール。母です。」
「リムから話は聞いた。君がいなければルーは助からなかっただろう。本当にありがとう。」
「いえいえ…。たまたま近くにいただけですから。」
「でもシルバーウルフの群れを倒したのでしょう?凄いわ。私達エルフもシルバーウルフの群れには腕の立つ者数人で対処するのが普通なのよ?」
「そうだぜ、しかも倒されたシルバーウルフを見たがシンキチ、一撃で倒しただろ?人間は皆そんなに強いのか?」
「どうだろう…。俺もこの辺りの人間社会から離れた所で鍛錬していたから、自分の強さが他の人間と比較してどのくらいなのかはよくわからないな。」
「まぁまぁ、シンキチ君の強さがどのくらいなのかは置いておいてとりあえずはご飯を食べながらお話ししましょうよ。」
「ん…。ごはん。」
こうしてアレミア家でお世話になることとなった。
初執筆です。
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