第027話「派遣勇者間違える」
第一章【レグナ王国編】
第027話「派遣勇者間違える」
シロが加わってから数日、俺達は変わらず王都を目指して馬車での旅を続けていた。
街道を使っての移動なので魔物との遭遇こそ無かったものの、食糧の調達では新参のシロが力を十分に発揮していた。
獣人族は基本的に肉体能力に長けた種族である。魔法を得意とするルーや長距離武器以外の攻撃方法を持たないアルメイ達後衛タイプと反対の前衛タイプになる。
さらに村を出てから今まで一人で生きてきたこともあって獣の捕まえ方や処理、食べられる草やキノコの選定まで出来る。おかげでシロが来てから食卓のメニューが増えたのだった。
(とはいえ俺の調理技術だと似たような料理にしかならないんだよな…。ルーはまったく料理できないし、加入時に期待したアルメイも残念ながら料理の能力は俺と同じくらいだし…。)
「旅の中で何とか調理の能力を上げたいところだよなぁ…。」
夕飯を食べながらポツリと呟く。
「う…。」
「うむむー。」
「あの…。私も料理上手くなくて…。その…。ごめんなさい。」
俺の独り言にルーとアルメイは気まずそうに唸り、シロは俺に謝ってくる。
「あ!そういうつもりで言ったんじゃないんだよ。三人共育ち盛りの年齢だから本当はビタミンとか栄養バランスを考えて料理をして食べさせてあげたいんだけど、俺も一人でいたことが多くてそういう能力が全然ないから申し訳ないなって。」
「栄養バランス?」
「びたみん?」
「…??」
聞き慣れない単語を発してしまったせいか、三人に?マークが浮かんでいる。この世界ではまだ栄養価の様な知識や研究はされていないのか世間一般では知られていないようだ。
「健康になったり成長するのに必要な食べ物に含まれる力の事かな。料理が上手くなるとそういう食べ物の力を最大限に利用しつつ美味しい料理が作れるようになるから旅の中で習得していきたいなって思ったんだ。」
「なるほどねー。」
「シンキチ!がんば。」
「私も料理出来るようになりたいです。」
「ありがとう。どこかで料理の上手い人に出会ったらしっかり教えてもらいたいね。」
長い旅の中、きっとどこかでそういう機会もあるだろう。その時は一人だけ料理に興味を示してくれたシロと一緒にしっかり学びたいと思う。
(ルーとアルメイは食べる専門宣言だったか…。)
そんな他愛のない会話でその日の夕食は終わった。
次の日、馬車を進めていると前方に街道の分かれ道が見えてきた。
「分かれ道みたいだね。」
「ん。」
今日は御者台にルーが一緒に座っている。
「どっちかな…。地図は荷台に置きっぱなしだったな。」
「ちずみてくる。」
そういってルーは御者台の背もたれを跨いで荷台に移る。
馬を停めても良かったがルーがその前に素早く荷台に地図を見に行ってくれたので俺は馬を動かしながら待つことにした。
「シンキチ、おーとはみぎのみち。」
「了解。ありがとね。」
荷台から聞こえるルーの指示によって馬車は右の道に入る。
左右の道で景色はさほど変わらない。さらに分かれ道にも看板や標識のないこの世界では地図や記憶が頼りになるのでそういう点では少し不便である。
その後も馬車は一本道となった街道をひたすら進むのであった。
分かれ道を右に進んで数日、俺達は道を間違えた事を知る。
きっかけは前方からやってきた行商人だった。
「おっ!」
「何なに!?シンキチ王都でも見えたの?」
俺が上げた声に荷台のアルメイが反応して顔を出した。
「いや、珍しく向こうから馬車が来るからさ。」
「な~んだ、ついに王都が見えてきたのかと思ったのに…。」
「それはまだまだ見えなそうだね。でも二頭引きの幌馬車に装備した人が相乗りしているから行商人かもしれないね!何か売ってもらえるかも。」
「何屋さんだろ?」
近づいてきた馬車の御者に声を掛ける。
「こんにちは。行商の方ですか?」
「あぁ、こんにちは。これからビル・レマーレへ商品を売りに行くんだ。」
「何を取り扱っているのですか?」
「衣服や日用品だな。」
「それは丁度よかった!成人女性用か小さめのサイズの男性服はありませんか?」
「あぁ、あるよ。欲しいのかい?」
「はい。丁度欲しかったものでして。」
「女性用だとスカート物になるが、同じくらいのサイズの男性物もあるぞ。」
「ならその男性物をいただけますか?」
というのも、シロの服が無いのだ。彼女は獣の状態(つまり全裸)で出会ってそのまま今の姿に戻ったので洋服を持っていない。今も布をベルトで止めて、はだけない様に羽織りつつ過ごしている。
元々は着ていた服があったが獣状態になると脱げてしまうので、森の中の拠点にしていたところに置いてきてしまったらしい。
俺は行商人から手渡された衣服を荷台にいるシロに着せてみてサイズが問題ない事を確認した上で購入させてもらった。
「それにしてもとても肌触りの良さそうな洋服でしたね。」
「そりゃあウチの街の特産品だからな!」
「王都は衣料品が有名なのですか?」
「ん?オートランドの布織物は特産だぞ?」
「?」
「??」
なんだか話がかみ合わないような気がして行商人に尋ねる。
「皆さんは王都からいらっしゃったのではないのですか?」
「アンタの言う王都って王城のあるレグナロッサの事だろう?」
「俺達はこの先の街、オートランドから来たんだぜ?」
「え!?」
「レグナロッサはアンタ達が来た道の先にある二股の別れ道を東に進んだ先だな。アンタ道間違えてるよ。」
「えぇーーーー!!」
そう。俺達は道を間違えた。
数日前の分かれ道の左が王都レグナロッサ、俺達が進んだ右は布織物で有名な街オートランドへ続く道だった。
俺達は王都の事をレグナロッサとは呼ばず「おーと」と呼んでいたので、地図を確認したルーが「オートランド」と思っていたのだ。
地図には「王都」ではなく「レグナロッサ」と表記されているからこれは仕方のないミスである。
俺も最近は旅を満喫するために自前のマップ能力をあまり見ておらず、マップは近辺に人や魔物がいるかの確認程度にしか使っていなかった。
「シンキチ…。ごめんなさい…。」
自分の勘違いで道を間違えて王都が遠のいてしまい、ルーはずいぶんと気落ちしてしまっていた。
「ルーは悪くないよ。俺達も王都って言っていたしね。」
「そうそう!王都はまた今度向かえばいいんだし、オートランドは洋服とか有名らしいからそれも見てみたいじゃん!」
「ルーちゃん悪くないよ…?」
しょんぼりするルーをその後も三人で必死にフォローした。
最終的にはアルメイの「可愛い洋服をオートランドで購入してシンキチに可愛いと言って貰えばいい」と言う一言でルーの機嫌が完全に治り、いざオートランドへ!ということになった。
この後オートランドで女の子達のファッションショーに付き合うことになることが確定した瞬間だった。
初執筆作品です。
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