第025話「派遣勇者驚愕する」
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第一章【レグナ王国編】
第025話「派遣勇者驚愕する」
「何かが来る!」
「えっ!?盗賊!?」
「分からない!けど林の中から一つだけかなりのスピードでこっちに向かってくる!魔物かもしれないから気を付けて!」
馬車を走らせている俺は残念だがすぐに戦闘に参加することはできない。
(何とかルーとアルメイで対処できる相手だといいんだが…。)
一応馬車の速度は上げたものの、荷台を引く馬の速度を遥かに超えるスピードで向かってくるそれはぐんぐんと馬車との距離を縮めている。
「そろそろ林から出てくるから準備するんだっ!」
「出てきた!薄暗くてよく分からないけど動物だ!!」
「こっちくる!」
「何とかなりそうかっ!?」
「頑張ってみるけど、馬車は動いてるし向こうも動いてるし薄暗いし、たぶん当たらないよ!」
(どうする!?ここで急に馬車を操作するのを止めれば事故を起こすかもしれない、それに馬車を止めればすぐに相手に追いつかれてしまう!)
俺が考えている間にも動物と馬車の距離はどんどん縮まっていく。
「かなり距離が近くなってきたから狙えるかもしれない!」
「アルメイ頑張ってみてくれっ!」
「んー。」
アルメイが向かってくる動物に狙いを定めようとしていると突然、真横から静止が入った。
「アルメイ。だめ。」
「え!?」
「おいで。」
アルメイを止めに入ったルーは外に向かって両手を広げる。
そして間近まで迫ってきていたその動物はルーに向かって飛び掛かったのだった。
「ルーっ!!」
マップの表示とアルメイの声を聞いた俺は慌てて馬車を止め、荷台の中を確認する。そこには驚いた顔のアルメイと荷台を転がったのか逆さまになっているルーと、ルーに抱きかかえられた真っ黒な狼がいた。
「ルー!!大丈夫か!?」
「だいじょうぶ…。あたまうった…。」
とりあえずルーの方は平気そうだ。ルーが抱きかかえている狼を見ると全く動かない。身体が上下しているので息はしているようだがぐったりしている。
「シンキチ。」
「どうした?」
「おおかみ、けがしてる。」
そういってルーが手を開くと血がついている。狼は怪我を負っている状態で最後の力を振り絞ってここまで逃げてきたようだ。
「なおして。」
「いいのか?」
「げ、元気になったら食べられたりしない!?」
「だいじょうぶ。」
警戒する俺とアルメイだが、ルーがえらく自信を持っているように思えたのでここはルーを信じて狼を回復させることにした。
「〈魔法上昇〉〈治癒〉」
毛皮があるので傷が塞がっているかは目視で確認できないが、苦しそうに大きく呼吸していた狼が落ち着いたように見えるのでとりあえずは大丈夫だろう。しかし消耗した体力や失った血液はしばらく元には戻らないので突然襲うという事もないだろうし、ルーが大丈夫と言っているのだからここは素直に様子を見たいと思う。
「まさかこんな形で噂の狼に出会うとはね。」
「さっきの松明はこの子を追いかけていたんだね。」
「珍しい生き物には高い値がつくからね。冒険者ギルド以外でも探している人たちがいてもおかしくはないからね。とりあえず日が暮れてきてるけどなるべくここから離れた所まで行って、そこで今日の野営をしよう。」
「さっきの人達が来ても嫌だしね。」
俺は馬車を再度動かして日没ギリギリまで移動した。日が落ちて進めなくなったところで馬車を止めて野営を始める。
ルーには狼の様子を見てもらっている。俺は火を起こして夕飯の支度を、アルメイには初日から頑張って走らせてしまった馬の世話をお願いした。
夕飯の支度が完成したので狼を荷台に残し、三人でたき火を囲んで夕食を食べる。
「あの狼本当に大丈夫なの?」
「だいじょうぶ…。わるいこじゃない。」
「ああいう特殊な個体は頭が良かったりするから、意外と話が通じるかもしれないな。」
「そうなの??」
「俺は前に真っ白な狼に出会ったことがあったんだけど、その狼は長く生きていたらしくて会話が出来たよ。その辺の人間より賢かったな。」
「へぇ~。そりゃすごいね。」
「そいつはシルバーウルフの上位種みたいなやつだったから魔物だったけど、希少な個体は特殊な力を持っていることは珍しくないし、この真っ黒な狼も何か特別な力があるかもしれない。目を覚まして確認するいまではとりあえず様子を見てみてもいいかもね。」
「ん。」
夕飯を食べ終わった俺達は、片づけた後荷台に戻って寝ることにした。アルメイはまだ狼が少し怖いのか一番端に、俺とルーで狼を挟むように横になる。
最初は念のためルーも狼から話そうと思ったのだが「ふかふかでねる。」と狼を隣に置いて寝たがるので結局は『壁・アルメイ・俺・狼・ルー・壁』という並びで寝ることになった。
馬車で初めての睡眠になるがビル・レマーレで購入した大きめの布団を魔法鞄に入れてきていたので荷台でも非常に寝心地がいいし温かい。
俺達は満腹と布団の心地よさのまま、すぐに眠りに落ちてしまった。
次の日。俺は柔らかな感触に包まれていることに気が付く。
(何だこれ…。ムニムニだ…。)
寝ぼけつつ身体を起こすと、俺の隣には見知らぬ女の子が寝ている。
(ん??)
自分の手を見るとその見知らぬ女の子の豊満な胸へと伸びてた…。
「おわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
手を放すと同時に声が出てしまう。そして俺の大声にルーとアルメイが驚いて目を覚ます。
「―――!!何なにっ!?」
「シンキチうるさい…。」
「シンキチなんなのさ…。って誰!?」
「…ほんと誰!?」
「もしかして昨日の狼なのか…?」
よくよく見てみるとこの女の子は獣人の特徴が見て取れる。耳も獣耳だし尻尾も生えているのだが、それ以外は肘と膝から先が黒い毛に覆われている以外、人間と変わりない顔立ちと身体である。
(ビル・レマーレの宿で世話になったウサギの獣人族は二足歩行で言葉を話す動物って感じでこれほど人間に近い容姿ではなかったよな…。)
「シンキチぬの。」
「ん?」
「シンキチぬの!」
「布??」
「シンキチはれんち!!」
「あぁ!!ゴメンゴメン!!」
俺はようやくルーの意図に気づいて布を渡す。手足や耳尻尾以外は人間に近いその子は全裸なのだ。
「わざと…?」
「違う違う!!」
ジト目でこちらを見るアルメイ。
「シンキチはえっち。」
「いやいやいや!!」
誤解である。確かにまじまじと見てしまったが、ここまでで見かけた獣人族と容姿が全く違ったのに加え、昨日まで完全な狼だったものが、朝になると女の子になっていたものだから見てしまったのだ。
そこに下心は無かったのだ。信じてほしい。
まだ寝ている女の子に布を被せ二人に聞いてみる。
「この子は半獣人なのか?」
「どーだろう?アタシみたいに他種族の血が混ざっているとこんな見た目になるのかもしれないけど…。」
「おおかみ。」
「そうだよな。昨日は完全な狼だったしな。」
「なんにしてもこの子が起きないとわからないね。」
「昨日はだいぶ怪我で血を流していたようだし、しばらくは目を覚まさないかもしれないね。」
『グー…。』
寝ている女の子のおなかが鳴った。
「俺たちも朝食にするか。」
その音を聞いて少し気が抜けた俺達は取り敢えず朝食を食べることにした。
初執筆作品です。
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