第023話「派遣勇者の剣と馬車」
第一章【レグナ王国編】
第023話「派遣勇者の剣と馬車」
「これが完成したミスリル剣だ。試してみてくれんか。」
そう言ってウルグライムに渡された剣は非常に美しい剣だった。
「本来ミスリル剣は刀身全てを磨き、全体がミスリル特有の白銀になるように仕上げるのだが、お前さんの要望の通りあまり目立たない様にするため、研磨仕上げは刃先のみにしておいた。これなら剣の樋が黒くてぱっと見ただけではミスリル剣には見えんじゃろう。」
確かに刀身の中央部の凹みの「樋」と呼ばれる部分は鍛錬時の薄黒いままになっており、柄や握りの部分もかなり地味に作られている。セットで作ってくれた鞘も既製品のようなデザインになっているので、旅人が持っていても何の違和感もないだろう。
(これは想像通り百点満点の仕上がりだ!流石は有名鍛冶師なだけある…。)
「流石ですね。想像以上です。」
「さっそく使ってみるか?」
「いいですか?」
「今回の作品は特に自信作だ。ワシも自分の自信作をお前さんが使っている所を見てみたいからな。」
例の工房裏の空き地に来て、俺は剣を抜き、振ってみる。
先日借りた同サイズのミスリル剣よりもずいぶんと軽く感じる。重心がしっかりと中央に来ているから軽く感じるのだろう。そして剣にしっかりとした軸を感じる。既製品はこの軸が弱くて俺の力に耐えられないものが多いが、この剣は全く問題なさそうだ。
(ミスリルより圧倒的に硬いものを切ろうとしなければ折れることもないかな…。)
用意された丸太の前に立ち、腰を落とす。
(前回で俺の力は大体見せてしまっているし、ここはしっかりと使用して俺の力に剣がついてこれるか試しておこうかな…。)
「フン!」
俺は前回よりも速く、そして力を込めて剣を振りぬいた。
「…。」
「…。」
「…。」
前回の事があるからか俺以外の三名は丸太をジッと見つめている様だった。
(よし!今回もかなり良く振れたな!剣の方も全く問題なさそうだ。)
ガランッ!ガランッ!
「「「え…?」」」
「ん…?」
大きな音を立てたのは丸太ではない。丸太の隣に立てられた鎧を着たカカシだ。
カカシは鎧ごと真っ二つに切れて地面に落ちていた。
「えぇ…?うそでしょ…?」
「となりもきれた…。」
「ど、どうなっとんじゃ…。」
どうやら良い剣でいつも以上に速く切りつけたからか、隣の鎧カカシまで切れてしまったらしい。
前の世界の勇者装備をはじめとした超鉱石クラスの武器では良く起こっていた現象だが、ミスリルクラスの武器でこの現象が起きたのは初めてだ。
(俺のレベルが前の世界より上がっているのもあるだろうけど、それだけこの剣の仕上がりが良いってことだな。)
未だに目の前で起こった事に動揺を隠せていない三名だが、俺はウルグライムへ感謝の言葉を贈る。
「非常に素晴らしい剣です。本当にありがとうございました。」
「あ、あぁ…。」
「あとこの剣の製作料と今切ってしまった鎧の代金を後で教えてくれますか?」
「いや…。元々この剣の代金は貰わんつもりだったし、鎧も古いもんだから弁償とかは必要ないわ…。」
その後何を話してもウルグライムは上の空のような状態だったので、ルー達を連れてお暇した。
工房を後にした俺達は、この街で購入予定だった馬車を買う為にビル・レマーレ商会へ向かう。
伯爵から馬車を購入したいと思っている事を相談した所、馬車や荷車は基本的に商人や貴族が使用するため商会の方で取り扱いをしているとのことだった。
ミスリル鉱石をお礼で貰うことが決まった後に相談したのだがその際に伯爵から「それなら商会で馬車を売ってもらえるように紹介状を書いてあげよう。」と伯爵が二つ返事で紹介状を書いて持たせてくれたのだった。
「それにしてもシンキチって本当に凄いんだね。」
「となりのよろいがきれいにきれてた。」
「シンキチが強いのは一緒にいて知ってたつもりだけど、あんなに凄いとは思ってなかったよ…。しかもシンキチってまだ若いじゃん?なんでそんなに強いわけ?」
「ずっと修業していたからねぇ…。」
「ほんとどっかの有名な騎士様とかじゃないの?」
「そんなんじゃないよ。」
「シンキチゆうしゃ?」
「勇者じゃないよ。」
ルーはなかなか鋭い。
しかし『今は』勇者ではない。一般人としてこの世界に派遣された『元勇者』なのだから。
そんなやり取りをしながら歩いていると目的のビル・レマーレ商会へ到着した。
冒険者ギルドの建物とは違って小綺麗で少し豪華なレンガの建物だ。こういう所はやはり商人が集まる所ならではの印象の付けというやつなのだろうか。
「いらっしゃいませぇ!」
建物へ入るなり少し小太りの口ひげを生やした『いかにも私は商人です』という出で立ちの男性が挨拶と共に寄ってくる。
(子供の頃やったRPGゲームにこんな感じのキャラクターがいたな…。でもあのキャラはパジャマみたいな服だったがこっちのオジさんは割と立派な服装だ。)
声を掛けてきた人物は冒険者よりも随分立派な、それでいて貴族より大人しい恰好をしている。
「本日はどういったご用件でしょうか?見た所冒険者の方の様ですが…。」
たしかに剣を腰から下げ、なぜか子供を二人連れているいかにも冒険者な俺達をみて男性も要件を図りかねているようだった。
「今日は馬車を売っていただけないかと思いまして、レマーレ卿から紹介状を預かってきました。お話を色々聞かせていただけないでしょうか??」
そういって俺は伯爵からの紹介状を男性に渡す。
「ほう!伯爵様のご紹介ですか!中身を拝見させていただきますね。」
そういって封を切り、紹介状に目を通した男性は「ほうほう!」と声を出した。
「ではお話をいたしますので個室へご案内いたしますね。」
そういって男性は俺達を個室へ案内してくれた。
「それではご挨拶から。私はこの商会の副会頭の一人を任せていただいておりますモモットルと申します。今回のご相談は私が担当させていただきます。」
「シンキチです。」
「アルメイです。」
「ルー。」
「この度、馬車を購入希望という事ですがどういった馬車をご要望なのでしょうか?用途等詳しく教えていただけますか?」
「俺達は旅をしながら訪れた町で冒険者をやっているんです。見ての通りまだ幼い二人を連れての旅ですので、移動や寝泊りに使えるような馬車があればと思っているですが。」
「なるほど。お荷物をそれほど積む予定が無いのでしたら一頭引きの幌馬車で大丈夫そうですな。」
「幌馬車…。ですか?」
「シンキチ様は荷馬車をご存知ですか?荷馬車は基本一頭引きで屋根がありません。それに基本は二輪で軽量ですから安いですし、そこそこの荷を載せられるのが利点ですね。しかし乗り心地があまり良くないですし屋根もありませんので、あまり長めの移動手段ではお勧めできません。」
(アドナ村に行商に行っていたバリーズさんが使っていたのが荷馬車だったな。)
「その点幌馬車は屋根があり四輪です。荷馬車より重量が重くなりますので本来我々商人が幌馬車を使う場合は二頭引きを選ぶのですが、移動手段としてある程度の快適さを馬車にお求めで積荷も多くないのでしたら一頭引きでも十分かと思います。」
「なるほど。」
「ただ一頭引きの幌馬車はあまり需要が無いため新品を手に入れるのは難しいですね。」
「そうなのですか?」
「えぇ、やはり安価で積載量の大きい一頭引きの荷馬車か、二頭引きの大型の幌馬車が商人達の需要が高いので荷馬車より高価で、二頭引きの大型より積載量の小さい一頭引きはあまり需要が無くて多くは生産されてないのですよ…。」
「中古はありますか?」
「えぇ。中古でよければ在庫はあったはずです。ですが少しばかり古いもんで修繕してからでないとお売りは出来ないかもしれません。」
「修繕費と合わせておいくらくらいになりますか?」
「修繕箇所や交換部品等をお調べしないと正確な金額はお伝えできないので、明日まで待っていただけないでしょうか?修理屋を呼んで見積もりをお作りしますので。」
「大丈夫ですよ。」
「でしたら明日お昼過ぎにもう一度お越しください。それまでにお見積りを出しておきますし実際に幌馬車もお見せいたします。」
「わかりました。」
「ではシンキチ様また明日お待ちしておりますね。」
「よろしくお願いします。」
そう言って俺達は商会を後にする。
「どんな感じの馬車なんだろうね?」
「たのしみ。」
「まぁ古い中古みたいだし期待しちゃだめだよ?」
「だよねー。凄くボロイかも。」
「まぁ修理して綺麗にしてもらえば大丈夫だろうけどあまり高額じゃなきゃいいんだけどね。」
剣を無料で手に入れられたので買えないという事はないと思うが今後の事を考えると手持ちの資金はある程度残しておきたいしね。
初執筆作品です。
四、五日ペースで更新できるように頑張ってます。
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