第18-6話 魔族三人組の冒険者
俺とルシュが三人組の冒険者へと近づく
オークの男が俺達の方向を見る
「何だお前ら?
もしかして、青いルッタを追ってきたのか?」
オークの男は俺達にそう話しかけてくる
皮膚は肌色、頬に傷があり目つきが悪い
如何にも気性が荒そうだと言った風貌だ
ハーピーの女は近くで俺達の様子を見ている
後ろに見えるミノタウロスの男は青ルッタの確認している様だ
「まあ、そうなんだけど…
中々仕留められなくて」
追いかけてきたものの、あっさり倒されてしまい、
気が抜けてしまったので歯切れの悪い返事をする
「そうか、それは残念だったな
折角のレアものだったのに、俺達が頂いちまったな」
レアもの…?
確かに青いルッタは一匹しか見た事が無いが
「レアものってどういう事だ?」
俺の問いかけにオークの男は首をかしげる
「何だ?
青いルッタの事を知らないのか?」
不思議そうな表情をするオークの男の近くにハーピーの女が近づいてくる
首元まで伸びたウェーブの掛かった金髪、茶色の羽が特徴的だ
空を飛ぶ種族だけあって、服は極力軽くしている為非常に薄着だ
「もしかして、君達、最近冒険者になった噂の新人じゃない?
人族と魔人の二人組だし」
ハーピーの言葉にオークが納得する
「ん?ああ、なるほどな。
だからレアものの事も知らなかったのか」
そこでオークがハンマーを地面に突き立て、腕を組む
「青いルッタは珍しいんだよ、こういう大量発生するときにだって数匹しか見かけねえ。
依頼の報酬としては一匹として数えられるが、
コイツの殻や肉を欲しがる好事家が居て、100ラントくらいで売れるんだ」
100ラント…!
仕留められてたら…
俺の表情を見て察したのか、オークが口を開く
「コイツは流石に渡す事は出来ないぜ、結構な金になるからな」
先に追いかけていたのは俺達だが、倒されてしまったのは事実だから
どうする事も出来ない
この青ルッタ一匹で俺達が命を懸けて魔獣と戦う以上の報酬が得られる…
歯がゆい思いだ
そうこうやりとりしていると、俺達の近くにミノタウロスの男が近づいてきた
「どうした?」
とオークに話しかける
「兄貴、こいつらが青いルッタを追いかけて来たらしい」
オークがミノタウロスの男に返事する
ミノタウロスの男の背丈は俺よりも遥かにあり、俺の1.5倍以上はでかい
濃い灰色の肌で、筋骨隆々と言った外見も相まって
立っているだけで迫力がある
「コイツは俺達が仕留めたから渡せねえ。
まあ、青いルッタも満足に仕留められないなら、実力はまだまだって事だ、諦めてくれ」
オークの言葉が少し癪に障るが、事実ではある
俺もルシュも言い返さなかった
ミノタウロスが俺達の方を向き口を開く
「いや、この青いルッタはルーキーに譲る」
ミノタウロスの言葉にオークとハーピーが反応する
「えっ!?」
「何言ってんだ兄貴!?
コイツの報酬を逃すのか!?」
反応する二人にミノタウロスがオークとハーピーの方を向き、話す
「俺達ともあろうものが、ルーキーの獲物を横取りするなんて名折れだ」
この言葉に二人はトーンダウンする
「んぐ、まあ兄貴がそう言うなら」
「そうだね~…」
そう言ってもらえるなら、青ルッタを譲ってもらわない理由が無い
そう考えていた所
「……いらない」
その言葉はルシュが発していた
「ルシュ?」
「……」
ルシュはムスっとした顔で彼らを見ている
「そうだな、俺達が倒した訳じゃない。
申し出は有り難いが、断るよ」
ミノタウロスは黙って俺達の話を聞いた後に口を開く
「そうか、分かった。
じゃあコイツは俺達が貰うぞ」
そう言い、三人は俺達に背を向ける
「ごめんね~」
ハーピーが俺達に声を掛ける
「いや…」
俺はまともに返事が出来なかった
ルシュは何も言わなかった
「ま、頑張りな、新人らしく無理しない事だな」
オークが後ろを向いたまま話す
……彼らが去り、俺とルシュの二人が残される
「ごめん…」
ぼそっとルシュが声を出す
申し訳無さそうな声色だとすぐに分かる
「ルシュ…」
この子は悔しくて仕方が無かったんだ
ルシュの新たな一面が見えた
彼女は俺が思ってたよりもずっと負けず嫌いの様だ
「いいよ、俺も同じ気持ちだ、今日はこれくらいにしよう」
ルシュは頷き、帰り支度を始めた
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ギルドに戻ると、何組かの冒険者たちは戻ってきていた
全く引きずっていない訳ではないかも知れないが、ルシュの機嫌はかなり良くなっていた
報酬の清算をした後、冒険者のツェルが俺達に話しかけてきた
ツェルはダルメシアンの様な柄のコボルトだ
先輩冒険者ではあるが、先輩後輩の感覚は無く同僚と言った間柄になっている
彼と軽く雑談する中で、先ほどの三人の冒険者の事を聞いてみた
「ああ、それはレゾルのパーティーだなあ。
ミノタウロスのレゾル、オークのムーグ、ハーピーのチティルの三人組。
西支部を拠点にしてるから、東支部のこっちには滅多に来ないよ」
俺達が彼らを見た事が無い理由はそういう事だったのか
マーテンには冒険者ギルドが二つある、俺達が利用しているのは東支部、
西支部は遠いので利用する事が無かった
「連中は西支部どころかマーテンの冒険者の中でも指折りの実力者だ。
あいつらは安い仕事は受けないんだよね」
今回のルッタみたいなのは総動員だから例外だけど、ツェルは続ける
ツェルとの会話を終え、俺達はギルドを後にする
……
レゾルと言うミノタウロスの貫禄、あれがベテラン冒険者か…
オークのムーグとハーピーのチティルも熟練していたことが分かった
ルシュは決して彼らに劣ってはいない
むしろ能力ならばルシュの方が上だと思う
竜族である彼女に敵うものが居るとは思えない
だが、実際青ルッタを仕留めることは出来ずに悔しい思いをする事になった
何よりも大きいのは俺が力不足だと言う事だ
今回の出来事で俺達には目標が出来たと思う
いつかは彼らに負けないような冒険者にならなければ




