第15話 やるべき事
アステノを出て俺とルシュは街道を西に進む
道中ではアステノでの思い出話をしながら歩いた
数時間歩き、クステリの森から出る
閉ざされた森から抜け、地平線の彼方まで見える草原が目の前に広がる
「おぉ、何度見ても壮観だなぁ」
すっかり森暮らしに慣れてしまったから、この光景には圧倒される
「広い…!」
ルシュも隣で感嘆の息を漏らす
歩きながらこの光景を堪能する
……広い草原にも目が慣れてきた頃、幾つかの建物が視界に入る
「ルシュ、あそこが宿場だ。
今日はあそこで休もう」
「うん、分かった」
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宿場でチェックインをするときに、主人から話しかけられる
以前のスケルトンの時を覚えていたようで、礼を言われるついでに世間話をした
部屋に通された後、俺達はで荷物を下ろし、一息つく
宿場をルシュと一緒に見て回り、夕食をとった後
部屋に戻り、それぞれベッドに腰掛け、ルシュと今後についての話をした
「ヨウヘイはこの後どうするの?」
「取り敢えずはマーテンに行くつもりだよ。
旅をするにも、まずはその為の力を付けなきゃいけないからな」
ルシュは俺がこの返答をすることは想定済みだったのだろう
俺の言葉からそこまで間を開けずに口を開く
「じゃあ冒険者になるんだよね?」
「そうだな、お金だって必要だし、とにかく自力で生きていける様に、
稼げるようにならなきゃな」
冒険者について、俺はそこまでの知識を持っていない
以前この宿場でスケルトンの集団と戦った時に居たアロンとエルカンは冒険者だった
「冒険者について、メラニーから色々教えてもらった」
俺もテオックに尋ねてみたが、テオックも詳しく無かったので、俺の認識以上の言葉は出てこなかった
村長は流石と言うべきか、何に対しても詳しいなと思った
……冒険者とは、要するに便利屋であり、
魔獣退治から飲食店の店員まで、依頼された仕事をこなして生計を立てる人達の事だ
この仕事を斡旋するのがギルド
現在多くの国、街に冒険者のギルドがあり、依頼された仕事を冒険者が自らの意思で受領してこなす
多くの仕事をこなしたり実力が認められた冒険者に対してはギルドが特別に仕事を斡旋するケースもある
名乗れば誰でも冒険者になれる訳ではなく、ギルドで登録が必要になる
手数料も必要らしい
一通りの説明をルシュから受ける
「なるほど、ありがとう。ルシュ。
やっぱり冒険者にはならなきゃいけないな」
俺の言葉にルシュは少し照れ臭そうする
「私も冒険者頑張るから……!」
両手を胸の前でギュッと握りしめてルシュが話す
「ルシュが居てくれたら怖いもの無しだよ」
俺は笑いながら言うが、この言葉の半分以上は本気だった
だが俺がルシュにおんぶにだっこ状態になってしまうのは流石にどうかと思うので、
出来ることなら俺自身が強くなりたいとも思っている
一息ついたところでルシュが何かに気付いたように荷物の麻袋を開ける
「どうしたんだ?」
ルシュは麻袋の中から更に小さな麻袋を取り出す
「落ち着いたら開けなさいってメラニーが」
「村長……」
村長には本当に感謝の言葉も出てこない
ルシュは小さな麻袋を開け、中身を取り出す
「これは……」
まず出てきたのは小さなナイフだった
これは俺がテオックと一緒に採集をしていた時にテオックが貸してくれていた物だ
アステノの生活では半ば相棒だったが、テオックの物なので返却していたのだ
「テオック、大切に使わせてもらうよ」
続けてルシュが取り出した物は
金貨だった
「小金貨、5枚だから500ラントある。
これはメラニーが入れてくれたみたい」
ルシュがすべてを取り出して話す
「大金じゃないか……!」
二人の優しさをかみしめる
「ありがとう、テオック、村長」
俺たちは二人の餞別をありがたく頂き、床に就いた




