第13-2話 予兆 その2
思考が完全に停止した
村長は今何て言った…?
俺が記憶喪失ではない
何故?どうして?よりにもよってこのタイミングで?
ハッと我に返る
村長は俺の方向を見ていた
その表情はいつもの村長のものだった
「無理に答えろと言う訳ではないの」
顔面蒼白としているだろう俺の表情を見て、村長は優しく話し掛ける
「あなたの事はこれまでの事で信用に足ると思っています、そこは疑っていません。
ですが、私はアステノを預かる村長の身にあります。
あなたには何の問題も無かったとしても、何か事情があり、
それが村民を危険に晒す可能性があります」
村長の表情は優しいが、声は真剣なものだった
「私は村長として、村民の安全を守らなければならない立場にあるのです。
教えて頂けませんか?
貴方の事を」
村長は諭すように優しく、真剣に話す
……少しの間悩んだが
確信を持って村長は話をしている、どちらにせよ言い逃れは出来ないだろう
村長や村人達の人柄は俺も良く知るところだ、彼等を裏切る真似は出来ない
「……分かりました。
確かに俺は記憶喪失ではありません。
すみません、これまで黙っていて」
俺の言葉に村長は黙って頷く
そしてここで気になる事がある
「俺が何であるかは話します。
でもその前に、どうして俺が記憶喪失ではないと思ったのか教えてくれませんか?」
別に徹底して隠していた訳ではなく、なあなあでこれまでやってきたのは間違いないが
何を確信して話をしてきたのかは気になった
俺の言葉に村長は頷き
「そうですね……
まず私達の生活に対する理解、物事に対する知識の幅がとても大きい点です」
生活の中での点か、俺の知識(ゲームや読み物等)で既に知っている点はスムーズに理解していたが、
知らない事は全くの無知な部分か
記憶喪失でもここまでちぐはぐに抜け落ちるのはおかしいと思ったのか
「他には、先日のグアンプの時に、魔法を初めて見た、と言いましたね。
ではあなたの棍棒を出すその力は?」
……?
「あっ……!」
俺の棍棒を出す能力は魔法として説明していたんだった
魔法が初見である事を俺が教えてしまったのか
「記憶を失っている事に対する不安感もありませんでしたしね。
どちらかと言うと、知らない事に対して戸惑っている様子でしょうか」
村長は更に追撃する
「以前に笑ったのがいつぶりだった等、
記憶を失っていないと取れる発言もしていましたね。
コンビニ…のご飯とか」
宴の時か、あれも聞かれていたのか…!
これまでの失敗に焦り始める俺を前に、村長はいつもの優しい微笑を浮かべていた
「参りました…」




