第12-7話 木霊の棲む場所 その2
大木に扉は無く、高さ10メートルはあろうかと言う入り口があった
大木の中に入ると、そこにはひときわ大きなトレントの姿が目に入る
トレントが奥に、手前にテーブルがあり、それを囲うようにゴブリンが2人、オークが1人いた
中は木をくりぬいたような構造になっているかと思ったが、違った
どうやら壁になっている部分は全て木の根になっており、木の根に囲まれた中がこの空間になっている様だ
テーブルと椅子以外にも木製の棚や麻袋が壁に掛けられていて、ここに暮らす魔族達の生活の場である事が分かる
「長老さん、皆さん、こんにちわ」
村長が挨拶する
「こんにちわ」
俺とルシュも続いて挨拶する
「これはメラニー殿、お連れの方々も良く来てくださった」
何と言うか、年季?を感じさせる少々聴き取り辛さのあるしゃがれた声だった
トレントの長老が喋ったのだろう
「干しクレウィが美味しく出来上がったので持って来ました。
皆さんで召し上がって下さい」
村長の言葉に続いて俺とルシュがクレウィの袋を下ろして、ゴブリンとオークに手渡す
「おーこれは美味しそうだ、ありがとう」
オークの男に礼を言われる
軽く挨拶を済ませた所で、椅子をすすめられたので俺達三人は椅子に腰掛ける
ゴブリンの一人がお茶を出してくれる
一口お茶を頂いた所で、村長が口を開く
「ところで、何か問題がありましたか?」
村長の質問に対して
「そうなんだ。
実はこの集落の近くに魔獣が住みついちまって…」
ゴブリンの一人が答える
「我々じゃどうする事も出来ないんだ、情けない話だ」
オークが続けて喋る
そういえばアステノではテオックやラピドをはじめ、多少の魔獣なら対応できる村人達がいるので、
そこまで問題になる事は無かった
今回村長が呼ばれたのは、村長が魔法が使えるから対応できると言う事なのだろうか
村長は普段の立ち振る舞いからも荒事が得意な様には見えなかったので、
少し意外な気がした
ルシュを見ると、ルシュは長老トレントに興味津々の様で、様子を伺っている
長老トレントはルシュの様子を見て、表情を変える
少し微笑んでいるようにも見える
「メラニー殿、度々こうやって頼ってしまって申し訳ない」
長老トレントを初め、集落の住民達も申し訳無さそうな様子が見える
「いいえ、こちらもいつもお世話になっているのですから。
お任せくださいまし」
村長は微笑んで答えた




