第12-6話 木霊の棲む場所
「これは……」
広がった視界を見渡す
高い木に囲まれ、直径数百メートルはありそうな半球状の空間になっている
この空間が全体的に緑掛かっている印象を受ける
木の葉の密度がそこまで濃くないのか、この空間は比較的明るい
空間の中には幾つかの大木があり、木の幹に入り口の様な物が見える
これが住居になっているのだろうか
また他にも高さ2~3メートル程の低い木々も生えている
「わぁ……」
ルシュも辺りを見渡し、この空間に差し込む木漏れ日に目を奪われている
「二人とも、取り敢えず奥に行きましょう」
こうやって立ち尽くして見渡すのも恒例になりつつあったが、
村長の声で我に返る
俺達は空間の奥に進み、少しした所で村長が声を出す
「こんにちわ」
俺達の周りには誰もいない、村長は明らかに近くにいる何かに声を掛けている
ルシュを見ると、ルシュは一点を見ている
それはこの空間に生えている低木だった
「こんにちわ、メラニーさんと小さなお客さん達」
低い男性の様な、落ち着いた声が聞こえる
それは目の前の低木から発せられていた
「えっ、まさかこの木が」
俺の言葉に村長が微笑む
「ええ、この方はトレントですよ」
良く見ると木に目と口が付いている事に気付く
彫りが深いが温厚そうな顔だ
村長の言葉に驚くと同時にさっきの発言が思い起こされる
「すみません、この木と言ってしまって」
この世界の基準でさっきの発言が失礼かどうかは分からないが、反射的に謝罪する
「気にする事はない、トレントを見るのが初めてなのだろう」
特に気にしていない様子で返事される
「用事があると言う事で今回伺いました。
長老さんは奥にいらっしゃいますよね?」
村長の言葉にトレントが頷く
「ありがとうございます」
村長が頭を下げ、俺とルシュも続いて頭を下げる
俺達は空間の中央になる大木に向かった