第12-5話 精霊の木
精霊の広場の中央にある切り株に俺達は腰掛けて休憩する
さっきのルシュの話だと、この中央の切り株はただの切り株では無さそうな気がしたので
腰掛けて良いのかちょっと悩んだが、村長は気にせず腰掛けたので、それに続いた
「さっきお話したけど、この切り株は私がアステノに訪れた時には既にこの状態だったの」
村長が口を開く
「言い伝えで、昔はここには大木があったそうです。
精霊の木と呼ばれていてこの広場の名前の元になったみたいね」
村長の言葉を聞いて疑問が浮かぶ
「この切り株が精霊の木なんですか?
大木という程の大きさではない気がしますが」
俺は率直な質問をする
村長は俺の質問に少し考える素振りを見せて答える
「どうなのかしら、あくまで言い伝えだから。
実際に精霊の木があったけれど、何かがあってこの姿になったのかもしれません」
村長は切り株の上に優しく手を置く
「どちらにしてもこの広場には穏やかで優しい気が満ちていると感じるから、
きっと今も精霊様が見守ってくれていると私は思います」
村長は、ここまで黙って話を聞いていたルシュに向かって口を開く
「ルシュが見たのは、ここと良く似た他の精霊の広場ではないかしら。
またゆっくり思い出していきましょう」
村長の言葉にルシュが頷く
……こうして10分程度休憩した後
村長が立ち上がり、口を開く
「それではそろそろ行きましょうか。
あちらから小道に出て進みましょう」
村長の指差した先に、うっすら小道が出ているのが分かる
俺達が採集の時等に通る道に比べるとかなり小さな道で、言われなければ気付かなかったかも知れない
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俺達は小道に入り暫く歩き続ける
歩き続けるにつれ、少しずつ周辺の木が高くなってくる
クステリの森は広大で、場所によって様々な顔を見せる
アステノから街道沿いは木々は比較的低く、陽の光も多く差し込み明るい
大樹の水場は魔素によって青みがかり、木々が鬱蒼と茂っている
ここで暮らし始めて暫く経つが、
今でも地理に詳しい人物が一緒に居ないと、俺だけでは遭難してしまうだろう
暫く歩いた後、歩きながらふと思った疑問を村長に尋ねてみる
「そう言えば、集落に住んでいるのはアステノと同じ様に魔族なんですか?」
同じ魔族ならわざわざアステノから外れた場所に住まなくてもと思った
村長はすぐに返答してくれた
「そうね、魔族の方も住んでるけれど、その集落にいるのはトレントの方々よ」
「トレント?」
俺とルシュが同時に喋る
「そうです、木霊と言われる方々で、魔族とは少し違います。
そろそろ見えてきますよ」
村長の言葉の後、俺達の目の前に高い木に囲まれた空間が広がった