第12-4話 おぼろげな記憶
俺は村長とルシュと一緒に村から出て道を進む
クレウィの入った麻袋は俺とルシュが1袋ずつ持ち、村長の後ろから着いて行く形になっている
ルシュが袋を2つ持てると言ったが、それでは俺の立つ瀬が無いので、1つ持つ事にした
村長は魔道具を手編みの袋の中に入れ、ルシュはそれを首にかけている
これで集落の人達を驚かせる心配は無いらしいが、
俺にはルシュがこれを着けていても何かが変わったように感じなかった。
きっと俺には魔力を感じる才能は無いのだろう、実際魔力そのものも無さそうだが。
などと考えていると、ルシュが口を開く
「メラニー、集落はどれくらい遠くにあるの?」
ルシュの言葉に村長がルシュの方向を見て答える
「それほど遠くはないわ。
村よりは少し木が多いけれど、木漏れ日が心地良い素敵な所よ」
村長の言葉にへぇ~とルシュは少し嬉しそうな返事をする
村を出てからルシュはずっと上機嫌だ
無理だと思ってた外出が叶ったのがとても嬉しかったのだろう
ルシュの表情を見ていると俺の表情も自然と綻ぶ
穏やかな空気のまま、俺達は道を進み続け、開けた場所に出る
その場は森に囲まれた広場になっており中央に切り株がある
「ここは、精霊の広場ですよね?」
俺の言葉に村長が頷く
「ええ、この広場から南東に出て進んだ所にあります。
ヨウヘイ、ルシュ、疲れていませんか?
ここで少し休憩していきましょうか」
村長の提案に
「そうですね…、ルシュは…」
ルシュを見ると、ルシュが広場中央にある切り株をじっと見つめている事に気付く
「ルシュ?」
俺と村長がルシュの様子を見ていると、ルシュがぼそっとつぶやく
「ここ、切り株じゃないし、もっと大きな木があったと思う」
ルシュが何を言っているのか俺には分からなかった
村長は少し黙った後、ルシュに話し掛ける
「この広場の木はずっと昔から切り株のままだと聞いているわ。
ルシュはこの場所に見覚えがあるの?」
村長の言葉にルシュは目線を動かさず、少し俯いてから答える
「分からない…見た事ある気がした」
ルシュの様子を見た村長は、ルシュの顔を覗き込んで話し掛ける
「無理に思い出そうとしなくていいのよ。
少しだけここで休憩してから集落に向かいましょう」
「うん、ありがとう」




