第10話 新しい日常
日が昇り始めた時間、俺はテオックの倉庫から外に出た
テオックの家からは物音が聞こえる、既に起きている様だ
見渡すとこの時間でも既に仕事に入ろうとする村人の姿がちらほら見える
朝日に照らされた森に囲まれた村の光景は、空気の清涼さも相まって爽やかな気分にさせる
すれ違う村人達に挨拶をしながら、村長の家に向かった
村長の家は村の北東部分、
村道から少しだけ高い位置にあり、入り口の前には10段程の石の階段がある
木造の平屋であり玄関の周囲には花壇と、
手入れが行き届いているので古めかしさは感じられない
扉をノックすると、はーいと二人の声がして、すぐに開かれる
「おはよう、ヨウヘイ!」
「おはよう、ルシュ」
……
ルシュがアステノに来てから既に2週間ほどになる
ルシュは村長の家で寝泊りし、日中は俺と一緒に行動している
村長は日中雑務をしている点、ルシュにとっても通訳が可能な俺とだと行動しやすい点からも
この様な形になった
「それじゃあ今日もルシュを宜しくね」
「ええ、それじゃあ行ってきます」
村長の言葉に返事を返す
最初は何となく緊張したこのやりとりにももう慣れたものだ
「行ってきます」
ルシュが村長に告げ、村長はニコニコとした表情で見送る
こう見ると村長とルシュはおや…いや姉妹の様に見える
最初は村の中を散策したり、村人達の仕事を見学する形でルシュを引率していたのだが、
1週間程経ってからはテオックと三人で近場で薬草や食料採集を行なっている
ルシュは出会った時は厚手の布の衣を着ていたが、今は村長お手製の服を着ており、
森に入るので、動き易く汚れても良い服装になっている
薄オレンジ色の麻のチュニックに茶色の布製のベルトと、見た目にも気を遣っていると感じられた
テオックの家まで移動すると、既にテオックは準備を整えて家の前に立っていた
「テオック、おはよう」
ルシュが真っ先にテオックに挨拶する
「おお、おはよう、こっちの言葉で挨拶するとは思わなかったぜ」
俺には少々片言気味に話したように聞こえたが、ルシュは魔族の言葉で挨拶したらしい
村長から魔族の言葉を教わっているのだろう
テオックは俺とルシュを一瞥し、今日の方針を伝える
「少し前に雨が降ってたから、多分丁度良い頃合だ、今日は大樹の水場へ行くぞ」




