第7-5話 限界と可能性 その2
俺は現れた鉄製のメイスを見る
柄はひやりとして金属である事を主張しており、
柄頭はやや丸みを帯びた球状で側面がスパイクのように鋭く尖っている
長さは60cmほど、少し重いが大型の棍棒よりはかなり取りまわし易い
「うおおおおおぉぉぉ!」
メイスを思い切り頭骨に振り下ろす
メイスが頭骨に当たる
「くっ!」
まだ砕けない
だが弾かれない、確実な手ごたえがある
腕の疲労が限界を迎えようとしている
こいつが動き出すまでの時間も無い
メイスを両手で持ち、真上に掲げる
「くだけろおおおおぉぉぉ!!」
思い切り下に振り下ろす
メイスが頭骨に触れ、硬い石が砕けるような音がして、
スケルトンの頭骨が二つに割れた
「やった……!」
安堵、達成感、興奮冷めやらぬ余り思わず口から声が漏れた
しかしその余韻に浸る前にふと気付く
まだ戦いは終わっていない
周囲を見渡す
たった今、テオックが崩したスケルトンの頭蓋に
アロンがナイフを突き立て、割っているところだった
他のスケルトンは……
ほぼ全て掃討済みになっていた様だ
俺の周囲に居たスケルトンもアロンとテオックが引き受けてくれていたようだ
そして少し離れた所に大きなスケルトンが見える
その近くには二人の人影があった
「後はあれだけだね」
いつの間にか近くに来ていたアロンが言う
「助けに入らなくていいのか?」
テオックも近くにきていた様で、アロンに尋ねる
「あれに割ってはいると却って邪魔になるよ。
もしも危なくなったら手助けに入ろう」
アロンは服についた草や土を払いながら答える
……最後に残ったのは今エルカンとセドが向かい合っているこの大型のスケルトンのみ
大型は3体いて、1体は俺が倒したが、もう1体は恐らくエルカンかセドによって倒され、
これが最後の1体になっている状態の様だ
武器持ちのスケルトンも既に倒された後で、農具が近くに転がっている
エルカンとセドの対峙するスケルトンの頭骨は牛ではない、
何の種族かは分からないが体格は俺が倒したスケルトンにも負けず劣らずだ
鉄製のメイスがある状態でも、俺では今の体力でコイツを倒すのは難しいだろう
スケルトンがエルカンに向かって腕を横薙ぎに振る
エルカンは斧を構えてその腕を受け止る
「なかなかやるじゃねえか!」
上機嫌そうにエルカンが話す
そこにスケルトンに向かってセドが距離を詰め
「むんっ!」
と言いながら剣を振り、刃の反対側、峰をぶつける
豪快な峰打ちを受けたスケルトンが崩れる
「これで終わりだ!」
エルカンがそう叫び、斧をスケルトンの頭部に振り下ろす
乾いた音を立てて頭骨は真っ二つに割れ、スケルトンとの戦いは終わった