第43-2話 国境 その2
国境門前の宿で一泊した俺達は、次の日
早速国境門へと行った
先日発行してもらった許可証を門番に見せると、特にトラブルもなく通された
ルシュから門番が凄くこちらを見てると言われたので、昨日の手続きの時の話が伝わってるかもしれなかった
そして国境の門をくぐると…
「おぉ~…」
ルシュが声をあげる
なんと町があった
レインウィリス側だけ町で、デュコウは小規模な宿場町だけなのか…?と一瞬思ったが、
町の奥にさらに城壁が見える
「国境間の町って感じなのかな」
俺は呟いた
……
眼前に広がった町、規模は小さく
俺たちが今通ってきたデュコウの城壁から、奥に見えるレインウィリス側の城壁まで、
歩いても十数分程度で着くだろう
城壁の両側は山になっていて、簡単には不法な国境越えは無理だろう
国境間の町を歩いてみる
魔族と人族、どちらも同じくらいの割合で歩いている
そして、建物は石造りの堅牢なものが多く、古いものも多かった
もしかするとこの町はかつての砦だったのかもしれない
そんな気がした
町の中は統一された鋼製の丈夫そうな鎧を着た兵士たちが多かった
マーテン等の街にも兵士は居たが、要所の守りや見回りが多く
ここまで町中を歩いている姿を見かけたことは無かった
後は商人らしき者たちや旅人が多い様だ
そんな中、特徴的な文様のついた看板を掲げる建物が目に入る
「冒険者ギルド、レインウィリス・デュコウ国境支部」
そう書いていた
ルシュも俺と同じようにギルドに興味を惹かれた様で、看板の前まで移動する
「ヨウヘイ、入ってみよう」
と言った
俺は頷き、ルシュと共にギルドの中に入った
-----------------
国境の町のギルドの中は6,7人が座れる丸テーブルが2つ、そして4人が座れるテーブルが4つ程度の酒場と併設された小規模なものだった
中には冒険者が数名、そして酒場とギルドカウンターに一人ずつと人数も少なかった
建物も古い石造りで、内装も武骨なものとなっていた
最低限の機能だけを備えたといった印象だ
俺とルシュはカウンター近くの壁に張りだされた依頼を見る
……
「魔獣の討伐依頼はないね」
ルシュが言った
ルシュの言った通り採取依頼や配達依頼、護衛依頼が少しあるだけで討伐依頼は無かった
「確かに」
俺はそう言ってルシュと一緒に張り紙を眺めていた
そうしていると
「魔獣の討伐は兵士がやってしまうからね、ここには無いよ」
と声をかけられた
「そうなの?」
ルシュがその方向を振り向いてから返事をする
相手は、ギルドの受付をしている人族の老人だった
白髪に髭を蓄えた温厚そうなおじいさんだった
「国境は兵士が多いから魔獣討伐も任務の一環なんだよ」
受付の老人がそう言った
「へ~…」
ルシュがそう言いながらカウンターへ向かう
カウンターの上に並んだ依頼の紙にも目を通して彼女も納得した様子だ
「…アンタ方が例の将軍を倒した冒険者かね?」
と言われ、俺はぎょっとした
「昨日デュコウ側の門にマーテンの英雄が来たと聞いたからのぅ」
俺たちにだけ聞こえる位の声量で老人が話す
「どんな強面かと思ったら、なかなか好青年と可愛らしいお嬢さんだ」
そういって老人は笑う
俺達は思った以上に有名人になっている様だ、俺は困惑、ルシュは少し嬉しそうにしている
俺達は少しだけこの受付の老人と話をした後、町を散策してこの日を過ごした
急ぐことは無いだろう、俺たちのペースで行けば良い
そう思った