第6-4話 魔族の老人と少女
建物の中は装飾が所々にあり、身分が高い者の家である事は明らかだった
装飾そのものは過度なものではなく、どちらかと言うと暗色が中心でシックな雰囲気がある
扉をくぐると、中には一人の魔族の女性が立っていた
まず目が行ったのが服装だ
シンプルで動き易そうな服だが、その上に体を覆うような薄いエプロンを付けていて、
割烹着の様に見える
この女性もこれまで見た事が無い種族だ
外見はとても人間に近いが、薄く青白い肌に青紫色のショートヘアー、
更に側頭部には頭の形に沿うように波打つ形の青黒い角が前方に向かって生えている点が異なっていた
その目は細く開かれていて、感情を感じさせない表情をしている
人間としてなら16,7歳くらいの少女に見える
パッと見大人の女性の様に感じられたのは
落ち着いた雰囲気と、割烹着の様な服装だからだろうか
「旦那様、お客様でしょうか?」
「うむ、応接室に通してやってほしい。
わしは一度部屋に戻るよ」
老人の言葉を聞いて女性が頭を下げる
「かしこまりました。
ではお客様、どうぞこちらへ」
女性に案内され、俺は応接室に通された
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応接室は椅子に挟まれる形でテーブルが配置されており、
奥には扉があった
装飾は施されているが、過度なものではなく
玄関と同様落ち着いたものとなっていた
テーブルはダークブラウンの色調の木製のテーブルで、
ワックスの様なもので磨かれているのか、室内の明かりを反射している
「こちらにお掛けになってお待ちください」
女性に声を掛けられ、椅子に座る
女性は奥の扉を開け、向こうの部屋に入っていってしまった
椅子はテーブルに合わせたダークブラウンの木製の椅子だが、
座面は布製のカバーの付いたクッションになっていて座り心地が良い
この世界で座った椅子で一番良い椅子だ…!
暫く部屋の中をきょろきょろ見渡していたり、
調度品を眺めていると、奥の扉が開き
老人と女性が入ってきた
「すまない、待たせたね」
老人は言葉の後、椅子に座る
「失礼します」
続いて女性がテーブルの上にティーカップと小皿を二つずつ置く
ティーカップにはお茶が、小皿にはクッキーが盛られている
準備してくれていた様だ
「そう言えば自己紹介が遅れたの、
ワシはリユードと言う、こちらは」
と言って女性の方を向く
「リヨと申します、リユード様のお世話をさせて頂いております」
と言って深々と頭を下げる
慌てて立ち上がって挨拶する
「あ、えっと、俺はヨウヘイと言います、宜しくお願いします」
「うむ、よろしく。
遠慮せず茶と菓子にも手をつけて良いからの」
思いがけず改まった空気に微妙に緊張していた俺にリユードが声を掛ける
「では、頂きます」
茶に口をつけてみる
熱過ぎず飲み易い温度だ
砂糖の入っていない紅茶の様な味だ、少し渋みがある
続けてクッキーを食べてみる
少し固いが、かじる時に良い音が鳴る
こちらは思ったよりも甘い、果物の様な甘みのある味だ
茶との組み合わせを意識している味だ、合わせるとどんどん進んでいきそうだ
凄く美味い
このお茶と茶菓子を用意してくれたのはリユードの使用人であるリヨなのだろうか
「作ったのはリヨさんですか?凄く美味しいです。
いくらでも食べられそうだ」
その言葉を聞いたリヨは一瞬驚いたような表情を見せ
「気に入って頂けて、とても嬉しいです…」
と言った
気のせいか頬が緩んでいる様に見える
「美味いか、そうだろうそうだろう」
リユードが俺とリヨの顔を交互に見て満足そうな表情をしていた




