第38-3話 訪問…者?その2
家に入ってすぐ、ルシュは赤髪の少女を浴室へと連れて行った
俺は、買ってきたものをまとめ、
今日使う分の食材をキッチンのテーブルに置き、
それ以外のものを一先ず食堂に置く
食堂はこの家の中央部に当たる為、生活重視の俺達にとっては憩いの間であり、
一番物が置かれやすい場所でもある
後から各々必要な部屋に持っていくようにはしている
そうしない食堂が物で埋まってしまうからだ
俺は食堂の椅子に座り、家に常備していた水を飲む
軽く運動した後の水は美味い
…取り敢えずあの娘についてどうするか考えないとな
と思いつつぼんやりしていると
「ヨウヘイー、お風呂終わったよー」
そう言いながらルシュが戻ってきた
相変わらず目のやり場に困る薄着のルシュと、後ろには俺の予備の服を着た少女の姿
「私の服じゃ大きさ合わないからヨウヘイの使った」
ルシュが説明してくれた
「まあ、それは良いんだけど…」
おれはあまり凝視しない程度に二人を見て話す
ルシュは慣れたものだが、少女については俺の服なので露出が多い訳ではないが…
「もう一枚くらい上に着せてやってくれ」
何となく俺はルシュに注文を付けた
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ルシュたちが上がったあと、俺は浴室に入る
浴室は石造りだが綺麗できちんと排水出来る様になっていて、風通しも良く出来る考えられた造りだ
浴槽に手を浸ける、良い温度だ
俺は体を軽く洗ってから浴槽に入った
「ふぅ~…」
この世界に来てからはずっと水浴びをしていた
マーテン等の都市でもそれは変わらず、普段は水浴び、
たまに公衆浴場を利用していた
公衆浴場は湯なのだが、毎回利用すると経済的に少々辛いので、
水浴びをすることが多かった
そもそも以前住んでいた家に浴室が無かった事もある
今回のこの屋敷と呼べるほどに広い家には浴室があり、薪を燃やして湯沸かし出来る様にもなっているが、
俺達が利用する際に使うものは別のものだ
それは炎の魔素の結晶を入れると、それを湯を沸かせる程度の熱を発する様に変換してくれる魔道具があるからだ
ランプの様な形状だが、水に浸けて軽く魔力を込める事で湯沸かしが行える便利なものだ
…当然俺には使用できないのでルシュにお願いしている
湯沸かしの魔道具、等と呼ばれる事が多いこれだが、
今回の家に引っ越す際にイルミニの店で購入した
報奨金には手を付けていない、その範囲である程度のものを買ったのだ
湯沸かしの魔道具、それそのものは使い続けられるが、炎の魔素の結晶が消耗品で、
公衆浴場よりは安い物の、これまたちまちまと冒険者家業を続けていく上では無視できない程度の出費になる
だからこういう特別な出来事があった日や、俺とルシュが湯に浸かりたい気分の時に使用している
…無心になる
あの少女の事が気になるが、そこまで大きな問題ではないだろう
マーテンならば仕事も、住処も見つけられるだろう
何ならピウリなり誰かに相談すればいい
ルシュたちはカラスの行水かの如く短い入浴だったが、俺はたっぷり30分以上浸かった
…浴室から出て着替えた俺はルシュたちがいるであろう食堂へ向かった
そうすると、途中にあるキッチンでルシュたちを見かけた
なんだか良い匂いがする
俺に気付いたルシュが俺に話しかけてきた
「ヨウヘイ、凄い、イルン凄く料理上手だよ!」
興奮気味のルシュ
そして鍋をかき回しながら少し恥ずかしそうに俺達を見る赤髪の少女の姿があった