第38話 慣れた街での新生活
「これで終わりっス」
フリドーが汗を拭きながら俺達に話しかけてきた
「ありがとね、フリドー君。
今日は良いの食べよっか」
ピウリの言葉にフリドーは嬉しそうに笑う
「ありがとう、ピウリ、フリドー。
凄く助かったよ」
「ありがとう」
俺達はピウリとフリドーに礼を言う
「これくらいどうってことないよ。
まあ殆どフリドー君がやってくれたんだけどねー」
ピウリの言葉にフリドーが恥ずかしそうな顔をする
…領主からの報酬決めた後、正式な引き渡しがあり、
俺達は住み慣れた借家を出てこの新居へと引っ越しをしたのだ。
荷物がそこまで多かった訳じゃないので、馬車1台で荷物は収まり、ほとんど全てフリドーが運び込んでくれた。
これだけの事をしてもらって料金はたったの200ラントだった
額だけなら決して安くない、が
引っ越し料金込み込みでこれなら十分すぎる
「本当に200ラントでいいのか…?」
俺の言葉にピウリは笑いながら
「アタシはこれでも貰い過ぎだと思ってるんだよー
だって、『マーテンの新星』改め、『伝説を穿つ者』からの依頼なんだから。
ウチも常連になってくれてるおかげで、宣伝になってて有難いくらいなんだよー」
『マーテンの新星』…俺達がグライエムを討伐した後にまことしやかに言われるようになった二つ名だ
あまり気にしていなかったが、少し気恥ずかしい
『伝説を穿つ者』…これはつい最近誰かが言い出した俺達の新たな二つ名らしい…
伝説は言う間でも無くロウザン将軍、そのでかい壁に穴をあけたからこの名前らしいが
少々大仰すぎるかな、と俺は思ってるが、ルシュは嬉しそうだ
こっちはあんまり流行らないで惜しい二つ名だな…
「そっか、ピウリ達にとっても役に立ててるなら良かった」
俺の言葉にピウリは笑う
「何か入用になったらいつでも言ってよー。
これからもウチをご贔屓にねー」
ピウリはそう言い、フリドーと共に去っていった
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新たな住居となった家に踏み入れる
最初から調度品は揃っていて、少し豪勢とも言える家だ
まずはどの部屋を自分の部屋にするか決める所からだ
ルシュはワクワクした様子で寝室を見て回っていた
俺も内心同じ気持ちだった
新居を見て回ると言うのは何とも言えない楽しさがある
俺とルシュは一通り部屋を見て回ったが、結局ルシュが慣れた感じが良い、と言って
ベッドが二つある寝室を選んだ
一人部屋は慣れないらしい
俺は少々困ったが、これまでずっと同じ部屋だったし、
特に変わらないかと言う事で、彼女の提案を了承して、寝室を決めた
この日は結局家の中を探検して費やす事になった
これからはこの家で新たな生活を過ごすことになる
これからの事に俺もルシュも期待で胸を膨らませていた




