第37-2話 横の繋がり
ギルドの酒場に戻ってきた俺達を待っていたのは
「やあ、おめでとう」
そこに居たのはハーフリングの少年
「アロン、それにエルカン、セド、セリーディも」
俺の言葉に彼等は微笑む
彼等に会うのは久々だ、これまでが目まぐるしすぎて
洞窟を探索したのが随分昔の様に思える
「ヨウヘイ、ルシュ、お前達は、強い」
セドからの賞賛の言葉
「まったくだ、あの将軍、俺とセドの攻撃を同時に受け止めやがったんだぜ。
信じらんねえ強さだった」
エルカンが腕を組み、うんうんを頷く
「とりあえず、こっちに来ないかい?」
アロンの言葉に、俺達はアロンのテーブルに移動した
「私とアロンは見学してたんだけど、ロウザン将軍は私達でもどうにもならなかったと思う」
セリーディが話す
「見学?」
ルシュの言葉にアロンが少し笑う
「オイラ達では勝ち目がないと思ったのさ、でもエルカンが聞かなくてね。
だからセドにもついてもらって、オイラとセリーディは見学してたって訳。
絶対勝てない相手に挑んで怪我するのも嫌だからね」
「なるほど」
何と言うか、クレバーなアロンらしい意見だ
「だが、強者と戦うのは、良い経験となる」
セドの言葉に、アロンは頷く
「そうだね、そういう意味では折角の機会だったのかなって思ってるよ」
アロンはそう言ってエールを飲む
そこでふとアロンが俺達の後方に目を向ける
そして驚愕の表情を浮かべた
「どうしたんだ」?
俺の言葉にアロンは答えず、俺の後ろに向かってこう言った
「アバリオ…!」
……
「こんにちは、ヨウヘイさん、ルシュさん、それにあなた方はアドザのアロンさん一行ですね」
ダークエルフの男、アバリオの第一声だった
アバリオの登場でざわつくギルド
ルガンドのアバリオは活躍そのものはすぐに耳に入らずとも、
『彼がこの国トップクラスの冒険者である』事については周知の事実だからだ
アバリオは俺達のすぐ近くの椅子に腰かける
「一言お祝いを言いたくて、ここまで来ました。
おめでとうございます。
あなた方は只者ではないと思ってました。
後からならどうとでも言える事ですけどね」
そう言ってアバリオは笑う
俺とルシュも面食らっているが、アロン達も驚いている
「アバリオとも知り合いだったのかい?」
アロンの言葉に俺は、少し固まったまま頷く
「始めまして、アロンさん、エルカンさん、セリーディさん、セドさん」
アバリオはアロン達に挨拶をする
「オイラ達の事も知ってるのか、宜しく」
アロン達が各々に挨拶をする
「あなた方はアドザでも名うての冒険者ですからね、活躍は聞き及んでます」
そう言ってアバリオは笑う
「耳ざといねぇ」
アロンは感心したような、呆れた様な様子だ
そうしてアロン達とアバリオ、集まってきた冒険者仲間達と会話していると…
ルシュの背後から何かが近づいてきた
何者かの翼が彼女を抱き混んだ
「チティル!」
ルシュは振り返る
「やっほー、なんか賑やかだねー」
チティルがいつもの調子で話しかけてきた
「アバリオか」
チティルの後ろに立つレゾルがアバリオに声を掛けた
「レゾル、久しぶりですね、元気にしていましたか?」
アバリオがレゾルに話しかける
「ふん…」
レゾルは不愛想に返事をするが、特に仲が悪いと言う訳ではなさそうだ
チティルがルシュに抱き着いたままアバリオに話しかける
「ルガンドのアバリオさん?カッコいいなあ、宜しくね」
チティルの言葉にアバリオは笑顔で
「こちらこそ宜しくお願いします、チティルさん、そしてムーグさん」
と言った
「げっ…俺の事も知ってたのか」
ムーグは警戒気味にアバリオを見る、苦手なタイプなのかもしれない
「アロン、お前も元気そうだな」
レゾルがアロンに声をかける
「お陰様で、君も変わりないみたいで」
アロンの口調は柔らかい
こんなところで冒険者同士の横の繋がりを見る事になるとは
こうして俺とルシュ、アロン達一向、アバリオ、レゾル達はテーブルを囲って談笑した