第6-2話 唐突な出会い その2
その男からは言い知れない威圧感の様なものを感じた
単にこれくらいの体躯の魔族はこの町では珍しくない
オーガやミノタウルスはこの男以上の体格だからだ
それとはまた異なる雰囲気だ
オーラと言っても良いかも知れない
このファンタジー物で言うところの魔王の幹部みたいな鎧がそうさせているのだろうか
俺が呆気に取られていると、男にどうした、と声を掛けられる
軽くエコーの掛かった中性的な声に聴こえる
これが鎧のせいかどうかは分からない
男の顔は兜に隠れて見えないので表情は分からないが
怒っている訳ではなさそうだ
「怪我はないか?」
「はい、大丈夫です…」
気圧されて情けない声を出してしまう
大男は特に気にする様子は無く、そうかと言った
「すまなかったな、それでは」
と言って大男は踵を返す
そして数歩歩いた後、こちらに振り返り、近寄ってきた
「ど、どうしました…?」
「もし良かったら良い食事処は知らないだろうか?
私はこの町に来て日が浅いから良く分からなくてな…
この市場も悪くないが、ゆったり座って食べたいのだ」
俺自身マーテンに来たのは昨日だ
店のことは全然分からないが、食事どころとしては思い当たる節があった
「あそこの通りを入ると、路地の中に【サンフィン】って店があります。
とても美味しかったですよ」
と説明した
大男はほう、と言い
「そうか、では早速行ってみよう、恩に着る」
と足早に路地に入っていった
その姿を見送り、俺はまた市場を散策する事にした




