第36-6話 領主の館にて その2
夕方、俺達は食堂に呼ばれ、
領主より豪勢な夕食が振る舞われた
俺とルシュ、そしてアネイルの3名と領主と彼の娘の5人で食事と摂った
ロウザンは流石にこの場に居なかった
「本当ならロウザン殿にもこの場に居て欲しかったが、そういう訳にもいかなくてね。
同じ食事をロウザン殿の部屋にまで届けさせておるよ」
領主のバリューはそう説明してくれた
彼は罪人だ、本来なら歓迎したい存在ではあるがそうもいかない
建前という奴か
「あなた方とお会いするの楽しみにしておりましたわ。
色々と聞かせてくださいな」
領主の隣に座る彼の娘が俺達に話しかけてきた
彼の隣に座る彼の娘、外見的には10歳くらいの少女に映る
茶色の髪に俺と同じくらいの肌色
耳の先がやや尖っている所を除けば人間の様に見える
領主と同じレプラコーンなのだが、パッと見では俺には
人間なのかエルフなのかハーフリングなのかレプラコーンなのか見分けがつかない
「申し遅れました、私は領主バリューの娘、エディと申しますわ」
彼女は俺達に頭を下げる
俺達も彼女の後に自己紹介する
夕食は和やかに進んでいった
領主バリューは先ほど会話した時の様に非常に気さくな人物で、
俺達がマーテンで行ってきた依頼についての話を尋ねてきた
そして
「マーテンに現れたグライエムを討伐したのも君達だそうだね」
バリューはグライエムについての事に触れ、俺達を褒めたたえてくれた
少し気恥ずかしかったが、俺もルシュもきっと満更でもない様子だっただろう
そして、グライエムの事についてアネイルは初耳だったようで、彼女は驚いていた
そして暫く歓談が進んだ所で、アネイルがふと口に開いた
「領主様、本来部外者である私を招いて下さった事、本当にありがとうございます」
彼女は改めてバリューに礼を言った
「いやいや、ロウザン殿のお孫さんとなれば、無下には出来んよ」
バリューは上機嫌に答える
その様子にアネイルは頭を下げ、そして言葉を続ける
「重ねて失礼となりますが、領主様にお願いがございます。
おじい様を王都へと護送されると伺っておりますが、それに私も同行させて頂けないでしょうか」
アネイルの言葉
彼女は目を閉じ頭を下げた状態だ
少しの沈黙が場を支配する
「念のため理由を確認させてもらっても?」
バリューの言葉に
「おじい様は我が国の、そしてレーゼンダル家の誇りです。
私はおじい様と出会う事があるとは夢にも思っておりませんでした。
しかしおじい様と顔を合わせられる機会は、もう無いでしょう。
ですので、おじい様の末を見届けたいのです」
頭を下げたままアネイルは話す
数秒間バリューは黙った後に
「そういう事であらば、許可しよう。
無論、王都にもその旨について連絡しておく、心配めされるな」
バリューの言葉にアネイルは顔を上げる
彼女の表情が嬉しそうな事が一目に分かった
「感謝いたします…!」
こうして、俺達の夕食は穏やかなまま終わった