第36-4話 想いと時代 その3
それからロウザンは俺達について尋ねてきた
俺とルシュはアステノからマーテンへ行き、冒険者をしている事を話した
「クステリの森の中に村があるのか、確か木霊のトレントが住まう森だったと思うが、
今はあそこにも村があるのだな」
ロウザンは少し感心した様子だった
「マーテンも俺が居た時代にはまだ開拓されていなかった。
アステノ、マーテン、一度は目にしておくべきだったな…」
そう言うロウザンは少し残念そうな表情をしている様に見えた
「そして二人とも少々特殊な出で立ちの様だな…」
そう言ってからロウザンは俺達を交互に見る
「ふむ…動きはまるで素人と思ったが、それでも見事な戦いぶりだった。
機転の利いた動き、そしてルシュ、そなたは…」
ロウザンはルシュを見る
「いや…考え過ぎだな」
そう言ってロウザンは口をつぐんだ
……
マーテンから南に伸びる街道の途中の分かれ道を東に行くと、小高い丘の上に領主の館はあった
3階建てだが面積が広い、城とまではいかないが巨大な建物で、近付くにつれて建築からかなり時間が経ったのであろう
修繕の跡や、少々古びた所がある部分も目に入ってきた
だが、豪華である事には違いなかった
俺達は屋敷に近付くと、屋敷の入り口の門が次第に視界に入ってきた
門を守る衛兵の前で馬車が止まり、運転手が衛兵と会話する
そして、俺達は馬車を降りる
そうして少しの間門前で待機していると、屋敷の中から身なりの良いオークが出てきた
「ヨウヘイさん、ルシュさん、ロウザン殿、アネイル殿もお入りください」
ロウザンは流石に両脇を兵に固められた状態となっていたが、
オークの言葉に従い、俺達は屋敷の中へと入った