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異世界で俺が棍棒を使って無双する話  作者: くるっくる
第2章 棍棒の冒険者
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第35-10話 古の将軍

俺達の後方から聞こえた大きな音


それは扉が勢いよく開かれた音だった


俺達は扉に振り向く


「ロウザン…本当にあなたが逆賊であるならば、私が討たねばなりません!」

扉を勢いよく開いた魔人の女性は、俺達の見覚えのある人物だった


「アネイル…さん?」

俺の言葉、俺達の様子を見たアネイルは呆気にとられている


「ダメです!お待ちください!」

アネイルの後からコボルトの男が入って来る



以前俺達がロウザンに挑んだ後、俺達と会話した文官?の男だった



この様子に俺とルシュだけではなく、ロウザンも少しうろたえていた


……


俺達は広間を出て、簡易に用意された会議室へと入った

人払いはコボルトの男がしてくれた


疲れ切った俺達と、ロウザンだったがこの状況でお開き、と言う訳にも行かないので致し方無かった



簡単な椅子に腰かけ、テーブルを囲う俺達

ロウザン、俺、ルシュ、アネイル、コボルトの男だ


「ロウザン様、お身体は…」

コボルトの男をロウザンは手で制す

「トゥス、大丈夫だ…これしきの事では死にはせん」

と言い、トゥスと呼ばれたコボルトの男は黙る


「済まない、少し頭がクラクラしてな…

順番に話をしていこう」

ロウザンが口を開く


その言葉に俺達は黙って頷く


ロウザンが言葉を続けた

クラクラしている、とは言ったものの、先ほどのダメージはかなり回復している様に見える

聖酒の影響は残っている感じだが、キズは殆ど無いみたいだ

「まず、俺はそこの二人に敗れた、二人の名前を伺って良いか?」


ロウザンの言葉に俺達は頷く

「俺は、ヨウヘイ・アサイ」

「私はルシュ」


俺達の返事にロウザンは満足そうに頷く


「ヨウヘイ、ルシュ、有意義な戦いだった、感謝する。

俺は逃げも隠れもせん、投降しよう」

ロウザンはそう言った


その言葉にトゥスは狼狽える

「ロウザン様…!」


「トゥスよ、これまでの働き、感謝している。

後の事はお主に任せる、手間をかける」

そう言ってロウザンは持っていた剣をトゥスに渡す


トゥスは少し悔しそうに俯くが、ロウザンから剣を受け取り、頭を下げた


「本来ならばすぐにでも発つべきだが、もう日が暮れてしまった。

幾ら魔獣が減ったとは言え、山道を進むのは得策ではないかもしれんな」

ロウザンの言葉にトゥスが反応する


「明日にしませんか、勿論、それはロウザン様に勝ったあなた方の判断にお任せします」

トゥスはその判断を俺達に委ね、ロウザンもその言葉に頷いた


俺とルシュは顔を見合わせる


ロウザンは戦って分かった、誇り高い武人だ

逃げも隠れもしない、と俺は思った


「ヨウヘイに任せる」

ルシュは俺の言葉が分かっているかのように話した


「明日にしましょう、俺達も同行したいですが、今日は流石に…

その言葉にトゥスが頷く


「承りました。では本日はこの城でお休みください」

トゥスはロウザンを見る


「無論、俺は逃げはしないが…拘束した方が安心できるなら従おう」

ロウザンのその言葉に俺は首を振る


「その必要はないと俺は思ってます、戦って分かったつもりです」

自然と敬語になっていた


さっきまでは敵だった、だが今は違う

その立場の違いが俺の言葉を変えさせたのかも知れない


これで一先ず方針は決まった


俺達は一息つき、トゥスの淹れてくれたお茶を飲む


「私、全力であなたを蹴った、から…

正直、どうしてそんなに元気なのか分からない」

唐突にルシュが口を開く


ルシュは自分の力を自覚している、彼女がいくら疲れていたといっても

あの時の瞳がより紅くなったルシュは普段より力が増している様に思えた

その蹴りをまともに受けて、今こうして普通に受け答えできている事は俺も信じられなかった


その衝撃は、ロウザンの着ていた鎧の胸部が大きくくぼみ、鉄板にヒビが入ってる事からも明白だった



少し間を置き、ロウザンが口を開く

「良い攻撃だった、防具、そしてこれが無ければもう少し長い間俺はのびていたかも知れないな」

そう言って胸元から何かを取りだす


それは雷雲がモチーフとなったというデュコウの国印が記された銀色のプレートだった


最初にロウザンが俺達に見せたものだ


それをルシュに手渡す

「これは…?」

受け取ったルシュが不思議そうにプレートを見る、裏返すとそこにも何かの模様があった

その模様は険しい崖をかたどった様に見える


「陛下より賜った勲章だ、ミスリルで造られたこれに救われた」

ルシュは俺にプレートを差し出し、俺も手に取る


ただの金属板の様にも感じるが、何となく不思議な感覚がした



ミスリル…元居た世界の創作物では頻繁に目にする金属だが…

俺がこの世界で知っているミスリルは伝説級の金属であり、その希少性、加工の難しさ、コスト等の問題で

これで造られた装備は魔族、人族問わず国単位で見ても殆ど存在しないらしい

と言う事だった


冒険者ならば誰しもが憧れるミスリルの武具、だがそんなものを入手するのは現実的ではなく、

結局過去に数回あったらしい遺跡の中から発掘、くらいでしか見つかっていないそうだ


これは手のひら大のプレートだが、恐らく価値として途方もないものだろう


俺達がプレートを眺めていると、それを横から見ていたアネイルが口を開いた


「やはり、あなたはおじい様なのですね…」

以前であったときは落ち着いた女性といったイメージのアネイルだったが、何だかあの時より幼さが見える言動だった


アネイルの言葉にロウザンが反応する

「おじい様…俺には確かに娘は居た、だが孫は…」

その言葉を遮るようにアネイルが話す


「私の名前はアネイル・レーゼンダル。

あなたの娘、ラフラ・レーゼンダルは私の母です」


……


少しの間固まる俺達


そして


「えぇ!?」

俺とトゥスが素っ頓狂な声を挙げて驚いた


ロウザンもポカーンとした表情をしていた

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