第35-4話 好機 その2
遂に剣を抜いたロウザン
促され、大剣を持ち向かい合うルシュ
「卑怯…とは言わないよな?」
俺は次の棍棒を取りだして話す
「無論だ」
とロウザンは答えた
「しかし、そこに辿りつくのにそれほどの時間を要するとは…
やはり俺が思っていた以上に時が経っているのだな」
そう言い、ロウザンは自らの持つ剣を見る
…
ルシュが瞬時に踏み込み横なぎに剣を振るう
峰じゃない、刃を向けている
それを軽く受け流すロウザン
受け止めようとはしなかった
ロウザンはルシュの力を受けきる事は出来ない、俺はそう思った
俺は次の聖酒を浸けた棍棒を投げた
当たれば良し、当たらなくても飛沫が当たれば効果が出る可能性が高い
しかし
ロウザンはルシュの剣を捌いた返す刃で棍棒を両断、
飛沫を浴びることなく二つに分かれた棍棒はロウザンの後ろへ落ち、ガラガラと音を立てて転がっていった
「くそ…そう上手くはいかないか」
ロウザンは俺の方を見ていない訳じゃない
最初の棍棒の時もルシュが『ひきつけてくれていた』が受け止められた
俺からの行動を視えているし、対応も出来る
しかし、確信出来た事もある
向かい合っているのはルシュ…
恐らく俺を狙う事はないだろう
これは正直賭けだった
もしもロウザンが本気を出したとしても、「脆弱な俺を積極的に狙わない」事
やはり、俺達を殺すつもりがない
だがこれまでの挑戦者の中にはそれなりの怪我を負っていた者もいる
ロウザンは不殺で通すなどとは一言も言っていないし、自信に対しては殺すつもりで来いと言った
不殺なのは、ただロウザンにそのつもりがないだけの話なのだ
ロウザンにとっては俺はとるにも足らない存在だから、聖酒の棍棒を防げさえすれば良い
戦闘不能にしようとしてくる可能性もあるが、現状その様子はない
無視されている様で正直悔しいが、これについてはどうする事も出来ないので仕方がない
だが、ルシュについては一撃でも入れば決着が着く可能性がある以上、無視できないだろう
つまり、聖酒を浴び、多少なりともダメージを受けてるロウザンがルシュに対して手加減出来るかどうかは分からない
ルシュと何合か剣を打ち合うロウザン
そして、ロウザンが剣を下から上へと逆袈裟に切り上げる
「っ!!」
ルシュは躱そうと飛び退いた
「ルシュ!」
俺は叫んだ
回避は間に合っていなかった
彼女は脇腹から肩にかけて切り裂かれていた