第34話 新たな手掛かりを求めて
アバリオと話をした次の日
早朝から俺達は図書館へ向かった
出来るだけ時間を有効活用したいと思っていたが、
先日のアバリオの言葉より、タイムリミットが迫りつつあると知ったからだ
もしも軍が本当に動くことになればどうなるか…
現状ガリュエヌはロウザンの手によって復興し、発展しつつあると言える
危険だった山道も安全になってきている
それも事が動けばそんなことはなくなり、
古城はもちろんの事、復活しつつあるという山道の行路化も無駄になってしまう、そんな気がした
これまで国が本腰を上げなかったのはきっとそういう側面があったからだとは思うが
実際に動けばどうなるか、俺の想像力ではとても足りなかった
まあそんな使命感なんてものは俺には無い、もちろん穏便には済んで欲しいが…
俺達はただヤツにリベンジしたい
……
図書館に着き、中に入ろうとすると
中庭の一角に大きな何かが見えた
そこには大きなつぼみの様なものに包まれたアルラウネのクラエが目を閉じ、天を仰ぐように佇んで(?)居た
一瞬その姿に目を奪われる
花の妖精、いや魔族だったな…そこに大きな差はない様に感じた
そうしている間にルシュはクラエの元に歩いて行った
「何してるの?」
ルシュがクラエに尋ねる
瞳を閉じていたクラエが瞳を開き、ルシュを見る
「あらおはようございます。
今日はお仕事休みなので、こうやって光と魔素を集めてるんです」
ルシュに対してこう答えた
やはり植物の魔族だから光合成が出来るのか…
俺はそう考えながら話を聞く
「そんな事が出来るの?」
ルシュは少し不思議そうに尋ねる
「はい、私達アルラウネは光で栄養を、大地からは魔素を得ることが出来るんです。
この図書館は魔素の溜まりやすい場所に建てられているので丁度良いんです~
動くのが苦手な私やメニルは図書館に住み込みしてるので、お休みはこうして…ゆっくりと…」
そう説明してくれた
「そうだったんだ、休憩中お邪魔しました」
ルシュが珍しく敬語で話する、お邪魔しましたなんて言葉いつの間に使うようになったんだろう
「いえいえ、今日はメニルが受けつけしてますので、彼女に手続きはお願いしますね~」
クラエはリラックスしきっている状態なのか、なんだかふわっとした喋り方になっている
「うん、ありがとう」
「それじゃあまた」
ルシュは礼を、俺は挨拶をして図書館に移動した
…歴史書を読んでる中で、アルラウネについて触れられた記述を見た事があった
アルラウネがデュコウで魔族社会に溶け込んだのは比較的近年であり(とは言え500年ほど昔らしいが)
それまでは他の魔族に対して排他的、敵対的な種族だったらしい
長年他種族と交流を持たなかったアルラウネが魔族社会に溶け込んでいったように、今は人族と魔族も交流を持っている
初代魔王アンティロの時代に生まれたロウザンは今の世の中を本心ではどう思っているのか
何となくそんな事が気になった