第33-9話 実力者 その3
「どういう事ですか?」
俺はアバリオに尋ねた
「事が大きくなりすぎました。
最初は一介の賊に過ぎなかった存在が、今や国が賞金を懸ける程のものになっています」
「…」
俺達はアバリオの次の言葉を待つ
「ロウザン将軍は宣戦布告をしましたが、実際に行動を起こす様子はありません。
そもそもそんなつもりがない、とは思いますが…
これをいつまでも看過する事は出来ない」
アバリオが続ける
「デュコウには私よりも実力のある冒険者は幾らでもいます。
この時事に興味が無かったとしても、私達の様に要請を受ければロウザン将軍の元に向かうでしょう」
国でトップクラスの実力者であると評されるアバリオが自分よりも上がいると言う
謙遜ではなく本当の事なのだろうと思わされた
それくらい冒険者の層は厚いのだ
「後は…そろそろ軍が動くという話も耳にしています」
「軍が?」
俺は思わず聞き返す
「敗れてしまった私が言うのもお恥ずかしい事ではありますが、
冒険者に任せっきりに出来ない、そういう声自体は随分前から挙がっていた様です。
業を煮やしたという事ですね…。
軍が動くならば、デュコウの現将軍達も動くでしょう」
国は基本的には治安維持に努めていて、余程の事が無ければ動かないとは聞いていた
今回の出来事は…宣戦布告を見るならば余程の事か
今まで動かなかった事自体が意外、様子見していたと言う事だろう
「だから、どちらにせよこの自体は解決する事になると」
俺の言葉にアバリオは頷く
「その話、本当なの?」
ルシュが尋ねる
アバリオは少し黙り、少し周囲に目配せをしてから話す
俺達以外誰も居ない事は分かっているが、念のためと言う感じだ
「こういう仕事をしていると、伝手が出来てしまうもので…。
確かな話と思って頂いて良いかと」
と少しだけ声を潜めて話をした
結構な機密情報だったんじゃないだろうか…?
「その話、俺達にして良かったんですか?」
俺の言葉にアバリオは笑う
「何となくですが、あなた方は言いふらす様な方々ではないと思ったので。
人を見る目には多少自身があります」
と言った
「ルガンドに来ているのは、図書館に用があるのでしょう。
私達もロウザン将軍に関する情報を調べましたが、有益な物は得られませんでした」
この会話中に俺達の目的は看破されていた
ルシュが目を見開く
それを見てアバリオは更に確信を深めた様だ
「この都市の図書館にある書物は、デュコウのものだけではありません。
我らにはそれを理解する術がありませんでした」
そう言ってからアバリオは席を立つ
「お急ぎなさい、その術を見つけられたら、まだ芽はあります。
私が一方的に喋ってただけですが、貴方達とお話出来て楽しかったです。
またお会いしましょう」
そう言ってアバリオは店主に金貨数枚を渡し、出て行ってしまった




