第33-7話 実力者
デュコウの歴史書からはロウザンの弱点は分からないかも知れない
アルシェさんの言葉を思い返しながら、俺達は魔導協会を後にした
今日はそもそも図書館に行く予定はなく、そもそも今から行っても十分な時間を使う事が出来ない
図書館の入館料での出費を考えると無駄遣いが出来ない状態になりつつある
「これからどうしたものか…」
俺は呟く
俺の隣を歩くルシュが、俺の方を見て口を開いた
「もう一回ギルドへ行かない?」
「ギルドへ?」
俺の言葉にルシュは頷く
ロウザンの弱点が分かるとは思えないが、ヤツに関して何かしらの情報が得られる可能性はある
地理的な話だが、ルガンドとアドザが対ロウザンの最前線と言える
特にルガンドは規模が大きく実力者も多い
既に敗れてしまった後ではあるが、今各地から来ている旅人達もルガンドやアドザに立ち寄っているので
そう言った意味でも何か分かるかも知れない
「そうだな、もう一度ギルドへ行こうか」
俺達は再びルガンドのギルドへと向かった
……
ルガンドのギルドは一か所だけである
規模が大きい都市だが、ギルドは中心部にあり、どこからでもある程度の距離でアクセスが可能であり、
都市内を馬車等で移動する事も出来るので支部を設ける必要が無かったのかも知れない
ギルドは相変わらず広く、
マーテンの東、西支部の両方を合わせたよりも大きな建物となっている
かつては別の用途に用いられていた建物なのかもしれない
このギルドも酒場が併設されており、そこで情報交換や依頼をこなした後の打ち上げの場となっている
俺とルシュは適当な空きテーブルに着き、一息つく
ルガンドでは人族もある程度いるので、俺達が特別目立つことはない
特に今はロウザンの関係で旅人が多く、人族の国であるレインウィリスからも多くの旅人が来ているので
尚の事目立つことは無かった
「取り敢えず、何か食べるか」
俺の言葉にルシュが立ち上がる
「私、注文してくる」
ルシュが自発的にこういった行動を取る事は珍しい
余程食べたい何かがあったのかもしれない
「分かった、内容は任せるよ」
俺の言葉にルシュは頷き、酒場のカウンターへ向かっていった
…
その間、俺は周囲の冒険者達の言葉に耳を傾けていた
やはりロウザンに関する話をしているものが多いが、特に有益な話は無かった
新たな情報と言えば、ロウザンが根城とするガリュエヌ古城のある山道、そこで魔獣が出る事はほぼ無くなったらしい
後、ガリュエヌ山の向こう側、かつては交易路となっていた山道に関しても魔獣の掃討が始まっている様な話も聞こえてきた
その話に意識を向けていると、テーブル近くに誰かが来た
そこにはルシュと、明らかに給仕ではないダークエルフの男が立っていた
「ルシュ…とどちら様?」
「私はアバリオ・レインと言います。
お見知りおきを、ヨウヘイさん」
ダークエルフの男は軽く微笑んだ