第32-8話 古の将軍を名乗る賊 その2
視界が回る
続いて体に感じる浮遊感
直後、背中に衝撃を感じた
「ぐあっ!?」
俺の視点は天井を捉えていた
…何が起こった?
続いてドサっと音が聞こえる
そちらに目をすると、俺と同じように仰向けになったルシュの姿があった
ロウザンを見る
6,7メートルは離れてるだろうか
特に何もしてくる様子はなく、こちらを見据えている
俺は立ち上がり、棍棒を握り直す
ルシュも一瞬唖然としていたが、すぐに起き上がった
さっき、俺を棍棒を振り被り、ロウザンの胴目掛けて振り下ろした、はずだ
…だが、気付いたらこうなっていた
魔法?何をされたか分からないがダメージは無い
「ルシュ、もう一回だ!」
「うん」
俺とルシュは再度ロウザンに向かって駆け出した
…ロウザンを眼前に捉える
ロウザンは幾多もの実力者を退けてきている
今更言うまでもない、俺より遥かに強い事は確実だ
俺が勝てる可能性は万に一もないだろう
だが、ルシュは違う
ルシュの攻撃なら、素手でも良い、一撃でも当たれば決着が着く
俺が囮になってまず仕掛ける
勿論、俺だって捨て石になって死にたい訳じゃ無い
しかし奇妙な事だが、俺は「ロウザンと戦った者に死者が居ない事」に対して信頼を置いていた
怪我をしたとしても大けがを負う可能性が低い事も
さっきの勝手口から出てくる挑戦者たちの姿で確認していた
俺の攻撃は当たらなくていい、ヤツがどれだけ強靭でもルシュの攻撃さえ当たれば勝ちだ
俺はもう一度棍棒をヤツの胴目掛けて振る
今度はわずかに見えた
ヤツは棍棒の攻撃を受ける直前に俺の手首を取り、
そのまま投げ飛ばした
俺の視界はまたもや回る
また地面に叩き付けられるがすぐに視界をヤツの方に向ける
ルシュはヤツに殴りかかっているが、躱されている
勿論彼女は格闘術を心得てる訳ではないので動きは素人だが、
身体能力の高さから、そのスピードは早々対処できるものじゃないはずだ
だが、当たらない
ルシュが体をひねり、ヤツに蹴りを繰り出すが、
その足を掴まれてしまい、俺と同じように投げ飛ばされた
ルシュは俺よりも後方に飛ばされるが、受け身を取ってすぐに立ち上がった
「つ、強い…」
俺は思わず口をついてでる
「うぐっ…」
ルシュが悔しそうに呻いた