第32-5話 ガリュエヌの古城
馬車はゆっくりと歩みを止める
「ここまでだ、お疲れ様」
運転手の言葉に俺達は馬車を降りる
運転手に礼を言い、賃金を支払う
俺達の降りた場所は古城のふもとの一画、他にも馬車が何台も止まっている小さめの広場だ
俺達の目の前には古城が…と言う程近くではなかった
眼前に広がるのは木造の簡素な建物や廃墟を修復したような石造りの建物
小屋なんかもちらほらと散見される
「前に来た時よりも建物増えてるなあ、こりゃもっと発展しそうだな」
運転手が話す
古城が建っているだけかと思ったのに、そのふもとには小さな町が形成されていた
それほどに人が集まっているのか
それなりに活気があるように見える
俺達は古城に向かって歩いて行った
周囲の建物は宿、酒場、道具屋が多い様だ
後は寝泊まり用の小屋だろうか
いずれも簡素な造りで、建築、改築している所もちらほら見られる
古城に近付くと、とある光景が目に入った
「なんだろう、あれ…」
ルシュが呟く
古城の門前から何十、いや百以上だろうか、
行列が出来ている
城門の前に数人の武装した男が門番をして、行列を整理している様に見える
俺達が行列に近付くと、最後尾当たりの様子を見ていた武装した男が話しかけてきた
なんと人族だ
「君達もロウザン様に挑戦しにきたのかい?」
と言ってきた
「そうだけど、これは…?」
俺の問いに彼は少し笑う
「いやぁ、ロウザン様への挑戦者が多すぎてね、こうやって列になって待ってもらってるんだ。
最初は面食らうよなあ。
俺が挑んだ時はここまでじゃなかったんだけどねえ」
そう言ってから
「今からなら結構掛かっちゃうと思うけど、ロウザン様に挑みたいなら列に入ってくれ。
すまんね」
そう言われて俺達は大人しく行列に加わった
何だか思ったのと違う状況に俺とルシュも困惑している
確かに色々とした話は耳にしていたが、まさか賊の根城がただの廃城じゃなく
小さな町にまでなっていて、挑戦者が行儀よく行列を作ってるなんて、思わないだろう?
行列に並び、前に並ぶ挑戦者たちを見る
魔族が多いが人族も少なくない、色んな場所から集まってきているのだろう
冒険者と言った風貌の者もいれば騎士の様ないかつい鎧を着こんだものもいる
千差万別と言った先客たちを眺めながら、俺とルシュは持ち込んだ昼食をとることにした