第32-2話 宣戦布告
「宣戦布告?」
俺の言葉にピウリは頷く
彼女は少し興奮気味だ
宣戦布告…
「ピウリがされたのか?誰から?」
俺のマヌケな返事にピウリは
「アタシの事じゃないよー!この国が宣戦布告されたの!」
と鼻息荒く話した
……
ピウリの店で話を終え、街に出る
この宣戦布告の話はあっという間にマーテン中を駆け巡り広まっていた
この国、デュコウに宣戦布告したのは、最近巷を騒がせていた
ガリュエヌ山道にある古城を占拠していた賊だった
……
マーテン冒険者ギルドにて
「その賊はロウザン・レーゼンダルって名乗ってるらしいな。
ロウザン様って言えば伝説の魔将だぜ、初代魔王アンティロ様の時の」
俺達とテーブルを囲うコボルトの冒険者ツェルが肘をついて話す
ギルドでもこの話題でもちきりだった
どこもかしこもこの話題で盛り上がっている
冒険者仲間達は口々に話す
「なんで大昔のデュコウの英雄が賊なんかやってデュコウに宣戦布告するんだよ、名を騙る偽物だろ」
「ロウザン様って幾らなんでも昔過ぎるだろ…どう考えても生きてるとは思えねえ…」
「確かにガリュエヌ古城の賊はルガンドとアドザの二都市で掛かっても全然退治出来なくて
てこずってんなーとは思ってたけどな」
「あっちの手練れ冒険者も退治に向かったけど返り討ちに遭ったって噂があったもんな」
ルガンドはマーテンよりも規模の大きな都市だ
レゾル達に勝るとも劣らない冒険者が在籍している事は間違いない
にも関わらずどうにもならなかったと言うのは信じがたい
アドザって事はアロン達ももしかしたら挑んだのかも知れない、彼らは無事なのだろうか
「しかも、返り討ちにあったにも関わらず、誰も死んでないらしいしな。
帰ってこない連中がいるみたいだけど、どうなってんだか…」
「賊に付いたって事かも知れねえけど、本当にロウザン様なのか?
そんな馬鹿な…」
混乱が憶測を呼び、慌ただしかったマーテンだが、ガリュエヌ山道、ガリュエヌ古城からはある程度離れた場所にある都市だったため、
すぐに何かがあった訳では無かった
こうして冒険者や住民の関心がかつての伝説の魔将を名乗る賊に釘付けになったまま、一週間の時間が過ぎた