第32話 報せ
ある日
俺とルシュは仕事をせず休養し、
その中でピウリの店へ買い物に訪れていた
ピウリの店の入り口の扉を俺が開く
「いらっしゃいませ、あっ
ヨウヘイさんにルシュさん」
陳列棚を整理している途中である少女が俺達に挨拶をする
「こんにちは」
「こんにちは、クーシ」
俺とルシュが口々に挨拶する
この少女はクーシ、浅黒い肌、薄灰色の髪を持つダークゴブリンだ
背丈はゴブリンであるピウリくらい
ピウリほどではないが丸い瞳、クセっ毛気味に所々跳ねた髪が特徴的だ
前からたまにピウリの店で見かけた事があったが、客として訪れていた様だった
それが俺達がルガンドへの遠征していた時、ピウリが正式に店員として迎え入れたらしい
「今は店長とフリドーさんはお出かけ中で…」
クーシはちょっと慌てた様子で話す
ここで働き出してから日は浅く、まだ仕事にあまり慣れていない様な気がするが
店番を任されているとは、ピウリから既に信頼されているようだ
「そうなのか、取り敢えずはちょっと商品を見てるよ」
俺がそう言うとクーシははい、と言って作業に戻った
俺とルシュは必要そうな消耗品を見繕う
そうしていると一通り作業を終えたのか、クーシがお茶を淹れてくれたので
店内に置かれた椅子に俺達は腰掛け、クーシと話をした
「美味しい」
ルシュがお茶をごくごくと飲んでいる
「フリドーさんがぶれんど?してくれたお茶を淹れてるだけなので…」
クーシはちょっと恥ずかしそうだが嬉しそうに話す
「ありがとう、お茶まで出して貰って悪いなあ」
俺の言葉に
「店長がヨウヘイさんとルシュさんとは仲良くしておけって言ってたから」
クーシが思わぬ返事をする
「俺達と仲良く?」
ルシュがお茶をごくごく飲んでいる姿を横目に俺は尋ねる
「はい、良い付き合いするととっても良い事があるからって…」
クーシがそこまで言った所で
「そう、だからこのピウリ雑貨店をご贔屓にねー」
と後ろから声がした
俺達がそっちを見ると、いつの間にかピウリとフリドーがそこに立っていた
「店長、おかえりなさい!」
クーシの言葉にピウリはニコっと笑う
「店番ご苦労様ー」
ピウリが労いの言葉を掛ける
そして俺達に向かって話しかけてきた
「いらっしゃい!
そうそう、二人とも聞いた?」
「何が?」
尋ねる俺とお茶を飲む手を止めるルシュ
その言葉を聞いてからピウリが少し興奮気味に口を開いた
「宣戦布告があったんだよ!」
ピウリの口から思いがけない言葉が飛び出した