第30-7話 ウアルの村と神官 その3
ウアルの村の入り口
俺とルシュ、アリエラさん、それともう一人の魔族がそこから村の外に出た
スケルトンが度々出現している場所を目指す
「本当にお手伝いしてもらっても宜しいのですか?」
歩きながらアリエラさんがその魔族に尋ねる
「折角退治してくれるってのに、オラたちが何もしないわけにいかねぇからな」
そう言う魔族の青年はホブゴブリン、名前はグラッシュ
無償でアンデッド退治を引き受けた俺達に対して、道案内と手伝いを兼ねて村長が遣わした村人だ
村の自警団として活動している様だ
身長は俺と同じくらいだが、かなりガタイが良い
確かにスケルトンなら問題なく倒せそうに見える
「自警団だって聞いたけど、村を離れて大丈夫なのか?」
「自警団は他にも何人か村を守ってから心配いらね」
俺の言葉に彼ははにかみながら返す
なんだか牧歌的と言うか、地方の訛りの様な喋り方で
気さくな人物なんだろうなと思った
「つっても、一昨日に一人ケガしちまってな。
スケルトンを追っ払ってる時に派手に転んじまってな。
今でも動くのは辛そうだったな」
顔を指で掻きながらグラッシュが話す
その言葉を聞いてアリエラさんが反応する
「まあ、それはいけません。
後でその方の所へ是非連れて行ってください」
「あ、ああ、分かったよ」
グラッシュはアリエラさんの言葉に戸惑いながら返事をする
俺達は村の入り口から近くにある森の方向へ向かった
「森か…」
俺の言葉にルシュがこちらを見る
「ルーソーの森を思い出すね」
ルシュの言葉に俺は頷く
かつて戦ったグライエム
ルシュがいなければ恐らく大変な事になっていたあの魔獣
そのグライエムと戦ったのも森の中だった
どうしてもそれを想起させる
俺はメイスを握り直し、ルシュはいつでも剣を振るえるようにしている
「この奥に墓地があるだが、その近くからやつら沸いてくるんだよ。
何度おっぱらってもキリがなくて困ってるだよ」
グラッシュを先頭に俺達が後に続いて進む
そして
「待って、来てる」
ルシュの言葉に俺達は立ち止まり、武器を構える
アリエラさんを中心に守るように3人でその周囲に立つ
ルシュが一点を見つめている、その方向から来るのか
そう思った直後、俺達の前に白い布切れが飛んできた
風に飛ばされてきたわけじゃない、森の中は無風だ
「なんだコイツは…!?」
白い布切れの奥に二つに仄暗い光をたたえた謎の物体に俺は戸惑う
俺の言葉にグラッシュが反応する
「こいつはゴーストだ、厄介なのに出会っちまった…」
アンデッド・ゴーストの前に黒い何かが渦巻き出した