第30-5話 ウアルの村と神官
既に日が暮れ始めた頃、俺達はウアルの村に入った
村民達は既に家の中に戻り、人気が殆ど無くなっている
俺は周囲を見渡す
村の入り口近くの宿が目に入った
「今日はもう休みましょうか」
俺の言葉にルシュとアリエラさんは頷き、俺達は宿に入った
……
「こんばんは、冒険者さんかね?」
主人のコボルトのおばあさんが話しかけてくる
「はい、3名でお願いします」
俺はそう返事する
「はいよ、一泊一人15ラント、部屋は一室しかないけど勘弁しておくれね。
はい、これが鍵ね」
店主がそう言い、俺達は鍵を受け取る
「夕食を用意するから、後で食道においで」
店主の言葉に俺達は礼を言い、部屋へと向かった
……
荷物を部屋に置き、俺達は食堂に集まった
宿の主人が夕食を並べる
アリエラさんは食事を摂る前に祈りを捧げている、これもレダ教の教えなのだろう
主人はその様子を物珍しそうに見ていた
味は意外にも濃い目で、この村には塩が豊富にあるんだろうかと考えながら
俺は食事を摂った
食事後
俺達に宿の主人が話しかけてきた
「あんたさん方はこの村に仕事で来たのかい?」
主人の質問にアリエラさんが答える
「はい、この村にスケルトンの被害が出ていると伺いましたので、
レダ神様の教えの元、浄化を行いに参りました」
「……?」
アリエラさんの言葉に?を浮かべた表情を見せる主人
「あ、えーと…
私はレインウィリスから参りました、レダ教の神官です。
アンデッドの浄化は初めてなのですが、御力になれたらと思いまして」
アリエラさんの言葉に目を丸くする主人
「まあ、神官さんを見るのは初めてだねぇ!
スケルトン退治をしてくれるのかい、それは凄く助かるよ」
と嬉しそうに話す
「明日になったら村長の家に行って話をしておくれ。
しかしありがたいねえ、宿代は安くしておくよ」
こうして夕食を終え、俺達は就寝する準備に入った
……
部屋にはベッドが5つあり、その内の3つを俺達が使う事になる
俺は就寝用に服を着替えようとし、上着を脱ぐ
「あっ…」
声を発したのはアリエラさんだ
顔を真っ赤にしている
「え…と…その…」
真っ赤な顔を俯け、言い澱むアリエラさん
しまった、ついルシュや他の冒険者仲間と居る時の感覚で着替えようとしてしまった
聖職者である彼女はそういう環境とは異なる所で生活してきたのだろう
「すみませんっ」
俺は急いで上を着替える
「わ、わたし、外で待ってますね!」
そう言ってアリエラさんは部屋から出ていく
ルシュは一連のやりとりを不思議そうに眺めていた
……
俺達は順番に着替えを済ませ、ようやく落ち着きベッドに腰掛けた
「ヨウヘイさん、ルシュさん、ありがとうございます」
アリエラさんが改まって俺達に頭を下げる
「気にしないでください」
俺は彼女に声を掛ける
「道中の警護と言う事なので、本来ならここまでになるのですが…」
彼女はそう切りだす
そう、俺達の依頼の範疇はあくまでもウアルの村までの警護と言う事になっている
だが乗りかかった船と言うやつだ
「手伝いますよ、力になれると思います」
俺の言葉に
「うん、もしグライエムが出てきても私達がいたら平気」
こうルシュが続ける
やはりルシュもグライエムの事を懸念していた様だ
「ですがお金が…」
申し訳なさそうにアリエラさんが続ける
「いいですよ、気にしないでください」
俺の言葉にルシュも頷く
「…!
ありがとうございます!
では明日も宜しくお願いします!」
アリエラさんは深々と頭を下げる
こうしてウアルの村に到着した一日目は過ぎていった