第29-11話 完了報告 その2
「!」
驚く俺達と対照的に楽しそうな表情を見せるエデリオさん
「どうもー」
水晶玉に映るエデリオさんは手を振る
これは…ビデオ通話みたいなものなのか
と俺は思いながらルシュを見ると、ルシュは俺が思った以上に驚愕の表情をして、
素早く水晶玉の裏に回り込んだ
そこでひょこひょこと動いて水晶玉を裏から見て、困惑した表情をしている
「はっはっは、僕はマーテンにいるのでそこにはいなんですよ。
それは遠い場所の声と映像を映す魔道具ですね」
朗らかに笑うエデリオさん
「この魔道具、投影の水晶と言うんですが、一度で10分程しか使えないし、
魔力の充填に5日はかかるんですよ。
かなり貴重な品ですからね」
と説明してくれた
「その貴重な品をこのような事に使って全く…
エデリオさん、要件を進めてください」
アルシェさんがぴしゃりと言い放つ
「はっはっは、アルシェさんは手厳しいなあ。
それではヨウヘイさん、ルシュさん、本を返却した時に受け取った用紙を見せて頂けますか?」
「これですね」
エデリオさんの言葉に、おれは図書館で司書さんがサインしてくれた用紙を水晶玉にかざす
少しの間、用紙を眺めるエデリオさん
「確認しました、ありがとうございます。
ギルドへの完了報告は僕の方でしておきますので、
報酬はそちらでアルシェさんから受け取ってください」
と言った
「いいんですか?」
俺の言葉にエデリオさんもアルシェさんも頷く
「ひとまず依頼の件はこれで完了です。
後は定期連絡を」
そう言ってから、エデリオとアルシェの二人はマーテンやルガンドの近況の話をした。
こうやって定期的に連絡を行う事で遠方の情報を伝達している様だ
こんな魔道具がある事は知らなかった、貴重な品と言うのは間違いなくて、
俺の様な一介の冒険者が目にする事自体珍しい事なのかも知れない
「そうそう、ところでアルシェさん、
このあいだ連絡した、マーテン近郊に現れたグライエムの話ですが…」
エデリオさんがアルシェさんに話を振る
「はい、冒険者によって討伐されたという…」
「その冒険者がそこにいるヨウヘイさんとルシュさんですよ」
エデリオさんの言葉にアルシェさんが驚いた表情で俺達を見た
殆ど無表情だったアルシェさんが初めて大きく表情を崩した所を見た
が、すぐに無表情に戻る
「そうだったのですね…」
アルシェさんが俺達を眺めながら口を開く
そうして少し間を置いた後
「いやあ、アルシェさんの驚く顔が見られただけでもヨウヘイさん達に依頼して良かったです」
その直後アルシェさんに睨まれて首をすくめる
「じょ、冗談ですよ。
何はともあれ、ありがとうございました」
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投影の水晶でエデリオさんとの会話を終えた後、
俺達はアルシェさんより報酬を受け取った
「ありがとうございました」
アルシェさんが頭を下げる
「こちらこそありがとうございます」
「楽しかった」
とやりとりする
「長旅だったでしょうから、少しルガンドを楽しんでいっても良いかも知れませんね。
ここも良い街ですよ」
アルシェさんの言葉に俺とルシュは顔を見合わせる
「確かに良いかも知れないな」
「そうしよう!」
既にルシュは乗り気だ
「また何かあればお気軽にお越しください、では」
見送るアルシェさんを背に、俺達は宿へと向かった