第29-10話 完了報告
俺とルシュはルガンドの市街地を暫く歩き続け、
郊外の一角に辿り着く
柵に囲まれた中には程よく?手入れされた中庭
その中央に石造りの建物がある
2階建てで家としては大きいが、屋敷や砦としてはこじんまりしている印象を持つ
外に人影はない
「ここだよね」
ルシュの言葉に俺はもう一度地図を見直し
「うん、ここで合ってるはずだ」
そう返事し、建物に近付いた
両開きの扉は頑丈そうな造りになっていて
石造りの建物にマッチしている
俺は扉についているドアノッカーで扉を二回ノックした
少しすると、扉がゆっくり開いた
中から現れたのは人族の女性だった
茶髪のポニーテールで、青いケープを纏っている
「何か御用でしょうか?」
女性は淡々とした口調で話しかけてきた
「マーテンにいるエデリオさん、と言う方からの依頼で
ここに向かってほしいと言われましたので、伺いました」
そう言って冒険者の証を女性に見せる
その後、女性は一瞬眉をひそめる
そしてその事に気付き
「ああごめんなさい、エデリオさんからの使いでしたか。
どうぞ、中にお入りください」
そう言って建物の中へ通された
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建物の中に入ると、不思議な匂いが鼻をついた
さほど気になるほどではないが、独特な匂い
室内には棚が多く、棚の上には何らかの魔道具が所狭しと置かれている
また、スクロールや出しっぱなしになっている本が目につく
そんな中、女性の案内に従い
俺達は建物の中を進む
2階への階段を上り、左手の部屋に通される
「どうぞ、こちらへ」
俺達は促されるまま部屋の中に入った
部屋の中は他の部屋と異なり意外と簡素で
本棚が一つ、中央に大きなテーブルと、それを囲うように椅子が置かれていた
「こちらにおかけください」
女性の言葉で俺達は椅子に座る
「少々お待ちください」
そう言って女性は頭を下げてから部屋を出ていく
俺とルシュはそのまま暫く室内を眺めて待っていると、
扉が開かれた
「失礼します、ヨウヘイさんとルシュさん、ですね」
先ほどの女性が入ってきて話しかけてきた
手に持ったカップをこちらに置く
「どうぞ」
「ありがとうございます。
俺がヨウヘイで、こちらがルシュです」
俺の返事を聞いてから、女性が口を開いた
「私は魔道協会ルガンド支部所属のアルシェ・イッツと申します。
宜しくお願いします」
そう言ってアルシェがこちらに頭を下げる
「よろしくお願いします。
魔道…協会?」
聞きなれない名称だ、俺は聞き返した
「エデリオさんは何も言いませんでしたか…
魔道協会は本部をレインウィリスの都市スィーザに本部を置く組織です。
今では規模も縮小し、こうして細々とやっています」
少し落ち込み気味に見えるが、口調は淡々と説明してくれた
「では、本題ですが…」
アルシェはそう言って持っていたカバンから何かを取りだす
ゴトっとテーブルの上に置かれたそれは水晶玉?だった
「これは…?」
俺とルシュ首を傾げていると
「どうもー、ヨウヘイさん、ルシュさん」
と男性の声がした
「ん?」
俺とルシュが見渡すが、そこにはアルシェさんの姿しかない
「こっちですよ~」
と声がする
声の方向を見ると、水晶玉の中にエデリオさんの姿があった