第28-4話 風変りな依頼 その2
俺とルシュはオークの男に連れられてスラムを歩く
周囲からの視線を多少受けているが、
男も特に気にする様子はなく進む
このオークの男…
以前出会った時は何と言うかもっと刺々しい感じだったが
今はそんな素振りが無い
それどころか案内してくれるとは…
俺に並んで歩くルシュも不思議そうな様子だ
……聞いてみるか
「なあ、どうしてわざわざ案内してくれるんだ?」
俺はオークの男に尋ねた
オークの男は立ち止まり、俺達を見た
「それはアンタ達が恩人だからだ」
俺達も足を止める
「…恩人?」
俺は聞き返した
「そうだ、レゾルさん達を助けてくれただろ。
レゾルさん、ムーグさん、チティルさん達は俺達スラムに住む連中にも良くしてくれている。
あの人達を助けてくれたのなら、俺達にとっても恩人だ」
「そうだったのか…」
ここにそんな繋がりがあったとは思わなかった
いや…以前俺が風邪で寝込んだ時、ルシュがチティルとここに訪れた際
チティルがここの住民と親しそうにしてると言ってたな
「とは言え、俺達の目がここに住んでる連中全てに行き届く訳じゃねえ。
外から入ってきた連中にスリとか働く奴らもいるからな。
面倒ごとに巻き込まれたくないなら、あんまり入ってこない方が良いぜ」
そう言ってから再び歩き出した
暫く進むと、路地の一角にたどり着いた
目の前にはこじんまりとした2階建ての家が建っている
「ここだ」
オークの男はそう短く言った
「どんな人なんだ?」
俺が尋ねると、オークの男は少し間を置いてから返事をする
「会えば分かるぜ」
「なるほど、確かにそうだ。
案内してくれてありがとう、助かったよ」
俺の言葉にオークの男は頷く
「それじゃあな、アンタ達の活躍を祈ってるぜ」
そう言って、オークの男は道の奥へと消えていった
俺はルシュを見る
ルシュは俺を見て頷いた
俺は目の前にある扉をノックする
「ごめんください」
暫くの沈黙
その後家の中からガタゴトと音がする
そして、扉がゆっくり開く
「あー、はい?」
その姿に俺は驚き、一瞬言葉を失う
「あ、あなたがエデリオ…さん?」
俺達の目の前に現れたのは、
こげ茶色のぼさぼさの髪に髭を蓄えた長身の人間の男だった