第26-8話 真の戦士
喜ぶチティルの声を皮切りに張り詰めた糸が切れた様に
周囲の音が戻ってきた
レゾルは斧を下ろし、ムーグは傷薬を飲み、チティルは瞳に涙をいっぱいに溜めて喜んでいる
ルシュが俺の元に戻ってきた
「やったな、流石ルシュだ」
俺はルシュに労いの言葉をかける
その言葉にルシュは少し恥ずかしそうに笑う
「ヨウヘイが注意を引いてくれたから…」
ルシュが俺を労ってくれる
「俺がやった事なんて、大したことじゃないよ」
あの注意を引いた囮行動は確かに命がけだった、
俺が左に跳ぶのが一瞬でも遅れていたらぺしゃんこになっていただろう
だが事実、グライエムを倒したのはほぼルシュの独力だ
俺の出来る事は限られている、その限られている中で全力を尽くさないと、
ルシュに対する不義理になってしまう
そんな事を考えていると、俺達の元にレゾル達が集まって来た
「無事で良かった」
「大丈夫?」
俺とルシュが彼らに言葉を掛ける
チティルがレゾルとムーグに目配せして
「レゾルもムーグもだいじょーぶだよ!
二人とも本当にありがとう!」
目を赤くしたままチティルが嬉しそうに話す
「大したものだ」
レゾルが口を開く
「ルーキー、いや、ヨウヘイ、ルシュ
お前達の事を勘違いしていた様だ」
一拍置き、レゾルは続けた
「礼を言う。
お前たちは真の戦士だ」
レゾルからの最大の賛辞
「まあルシュが居てこそだったから…」
俺は照れ臭くなったこともあるが、本心を述べる
少し間を置き
「フン…
助けてくれとは、頼んじゃいないんだがな」
ムーグがそっぽを向いて話す
「もー、ムーグったら!」
チティルが口を尖らせる
「ま、このままじゃやられてたのは確かだ。
助かったよ」
ムーグは少しバツが悪そうに見える
「あの…」
ルシュがムーグに向かって話しかける
「ん、どうしたお嬢ちゃん?」
ムーグはルシュに向きなおす
「武器、折れちゃった、ごめんなさい」
ルシュは折れ曲がったムーグのハンマーをムーグに手渡す
「……」
少しの間の沈黙
「く、はははは!」
笑いだすムーグ
「そんな事気にしなくていいのに、律義なお嬢ちゃんだ!
はははは!」
可笑しそうに笑うムーグを見て
チティルも笑いだす
レゾルも笑いをこらえている様だ
それにつられて俺もつい笑ってしまう
「?」
ルシュだけが困惑した表情で立っていた