第25-16話 クィノーレンへの帰路
翌日
日が昇り始める時間帯に目が覚める
ほのかに良い匂いがする
視線をキッチンに移すと、アネイルが鍋の前に立っていた
「おはようございます」
俺はアネイルの背中に声を掛ける
「あら、おはよう。
良く休めた?」
「ええ、ゆっくり眠れました」
俺の言葉にアネイルは微笑む
「良かった。
座って、お茶淹れるから」
「じゃあお言葉に甘えて…」
俺は椅子に座る
「ルシュは良く眠ってるわね」
ルシュに視線を移すと、うつぶせになって眠っている
今まで見た事がない寝相だ…
「もう少し寝かせておいてあげようか」
そうしてアネイルに淹れてもらったお茶を飲み、
ルシュを起こしてから朝食をとった
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「それじゃあ、ありがとうございました」
「ありがとう、アネイル」
アネイルの家の前で俺とルシュは別れの挨拶を行う
「こちらこそ、とても楽しかったわ。
少し寂しくなるわね」
アネイルの表情は本当にちょっと寂しそうだ
「今からなら日が暮れる前にはクィノーレンには着くと思うわ。
気を付けてね。
また会えるといいわね」
「はい、また」
「またね」
そう言って、俺達はアネイルの家を出発した
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クィノーレンへの帰路は順調に進んだ
天気も良く、非常に過ごしやすい気温で疲れは溜まりにくかった
行きと同じ中間地点にある大きな木の木陰で昼食をとる
ルシュが少し疲れていてウトウトしていたので、少しだけ
休み、また出発した
夕暮れで周囲が紅色に染まる中、俺達は無事クィノーレンへと辿り着いた
疲労が溜まっているものの、依頼の品を届ける事を優先し、町長の家へ向かった
「おお、お早いですね。
ありがとうございます。
リキリアの花はこの地方の領主様が大変気に入っていましてね、
次に訪問する際にお渡ししようと思っていたのです」
クィノーレンの町長が嬉しそうに話してくれる
そして、革袋と一枚の封書を手渡してくれた
「これは報酬になります。
ギルドにはこの封書を提出すれば依頼は達成となります。
ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
俺は頭を下げ、町長の家を後にした
「終わったねー」
ヘトヘトになったルシュが俺に話しかけてくる
「マーテンの外に出て仕事をすると、慣れてないからか疲れるな。
今日は宿をとって休もうか。
明日一日くらいはこの町でゆっくりしてもいいだろう」
「うん、賛成」
そうして俺とルシュは宿へと向かっていった