第4-3話 買い物 その2
「もしかして、足りない?」
俺の様子を見てピウリが察した様である
「あー、その、まあ…」
俺の手持ちは先ほどテオックから貰った銀貨9枚
90ラントだ、この服は150ラントだから60ラントも足りない
「本当ならまけてあげたいんだけどねー…」
ピウリが少し申し訳無さそうに言う
「気にしないでくれ、サービスしすぎるとアンタが食えなくなるだろう」
商品名を記載した端切れのタグには冒険者の服と書かれている、日本語ではないが読むことができる
この服があると今後の生活でも役に立つだろう、出来ればここで買っておきたい
テオックに前借りするか…
いや、散々世話になっている、これ以上は迷惑を掛けられない
なら、トレーナーかチノパンを売るか…?
俺が暫く考え込んでいると、後ろから声が聞こえた
「あら、ピウリさんとヨウヘイ、こんにちわ」
後ろを振り返る
ウェーブの掛かったセミロングの紫髪でやや細目の整った顔立ち
そして下半身は蛇になっている
「村長」
「メラニーさんこんにちわー」
メラニー・ベルベ
種族はラミア、このアステノの村長だ
美人で妖艶な魅力に溢れた女性だが
服装は袖の長い緑色の服の上からケープを掛けていて、
上品な印象を受ける
「ピウリさん、品を見せてくださいな」
メラニーがピウリに話しかける
「はいはーい、フリドー君、商品並べてー」
「はいッス」
俺はピウリが商品を並べ終える前に店に来ていた様だ
ピウリ達が商品を並べている間、
メラニーは今既に出されている商品を眺めていた
メラニーの横顔を見ていると、その視線に気付いたようでこちらに話かけてきた
「ヨウヘイは何を買うか決めているの?」
「ああ、それなんですが…」
そう言って無意識に先ほどの冒険者の服に視線を移す
「その服が気になっているのね。
おいくらなのかしら」
「それ200ラントなんですけどー特別価格で150にしてますー」
商品を並び終えたピウリがメラニーに話しかける
「そうなんですよ、でもまあ…ちょっと」
値引きされて手持ちが足りないのはいささかカッコ悪い
「ヨウヘイはここに来てから日が浅いものね、
確かに少し厳しいかも知れないわね」
俺がアステノに来た時に無一文だった事はアステノの住民は知っている
実際には財布に小銭と免許証は入っていたがアレは使い物にはならない
「では私がこの服を貴方にプレゼントしましょう。
この服をくださいな」
いきなりのメラニーの発言に面食らう
「えっ!?いやそれは…」
ただでさえこの村の人達には世話になっているのだ
こんな所にまで甘えてしまうのは
「どうしたの、遠慮しなくていいわ。
貴方がこの村に来た事でテオックをはじめ、村人たちも以前より活気が出ました。
きっと人族である貴方の存在に刺激を受けているのでしょう。
そのお礼をさせてくれないかしら?」
と言いながらピウリに料金を支払っている
「はい、150ラント」
「どうもーまいどありですー」
「村長の気持ちは嬉しいですけど、
俺も村長や皆に助けられてるのでそれは悪いと言うか」
俺はしどろもどろに答えてしまう
それを聞き、メラニーは少し考えてから口を開く
「では私にプレゼントを渡してくだされば、
この服をお返しにプレゼントしましょう」
メラニーは優しい瞳で俺の目を見ながら話す
「プ、プレゼントですか……」
村長へのプレゼント……
これは冒険者の服を実費で買うより厄介な難題なのでは
「楽しみにしてるわね」
メラニーはいたずらっぽく笑った