第25-15話 アネイル その2
宵闇が差し掛かる中
明かりで照らされた室内
アネイルの目線は壁に掛けられた青白い剣に向けられている
「この剣は私のおじい様が魔王様から授かったものなの」
彼女の口からは思いがけない言葉が出てきた
「魔王から…」
俺は思わず呟く
「おじいさんは何と言うか、とても、凄い方なんですね」
自分の語彙力の無さを感じる
「ええ、おじい様は多くの武勲を立ててこの国に大きく貢献したの。
この剣はその中で頂いたらしいわ」
軟膏を塗った腕に視線を移し、アネイルは続ける
「他にも沢山武具を持ってたのだけど、おじい様は人族との戦いに敗れてから
色々とあったみたいで、残ったのはこの剣だけって感じなの」
今は魔族の中にいるのですっかり忘れていたが、
以前は人族と魔族は争っていたんだった
「そうだったんですね…」
自分が戦った訳ではないが、対立していた種族であるので
何も感じない訳でも無い
そんな俺の様子に気付いたのか
「あ、大昔の話だからね。
魔族も人族も譲れないものがあったんだから。
気にしないでね」
とアネイルがすかさずフォローしてくれた
「私はもっと強くなって、いつかは騎士になって皆を守りたいの。
おじい様みたいに…
その時初めてこの剣を持つに相応しくなれるんじゃないかって思ってるの」
アネイルが戦っている姿は賊のカドロとの戦いだけだが、
あのナイフを捌きながらも、
武器を弾いて無力化した事からも、手練れである印象を受けた
これ以上強くなる必要があるのかどうか疑わしい気もしたが、
単純な強さだけの話ではないのだろう
「なんて、面白く無い話してごめんね、あはは。
まあ、そういう事でこの剣はまだ私には早いかなって」
そう言ってアネイルは俺達に向かって微笑んだ
「今日はもうこれくらいにして寝ましょう。
明日は早く出発した方が良いでしょ」
「そうですね」
「うん」
そう言って俺達は床に就いた