第23話 ルシュ、頑張る
レゾル達に助けられた日から数日後
俺達は討伐や配達の依頼を受けながら生活していた
そんなある日の朝
目が覚める
部屋は灰色のフィルターを通したように少しだけ暗い
窓に目を向けると、そこには光の筋が見えず
ほのかに明るくなっている事が分かる
「曇り…か…」
天気予報はないので、前日の内に次の日の天気を正確に窺い知る手段はない
反対側を見ると、隣のベッドの上にルシュの姿はない
既に起きていて外で顔を洗っているのだろう
俺も起きて顔を洗うか
そう思い、上半身を起こそうとすると
「…?」
視界が揺れる
両手をベッドに付け、体を支えながら上半身を起こす
体がくらくらと揺れ、仰向けに倒れる
それから時間を置いて体が熱を帯びている事を感じる
参ったな…
暫くベッドに横になっていると、扉が開いた
開いた戸から差し込んだ光で少しだけ部屋が明るくなり、
直後に人影が視界に映る
「ヨウヘイ、おはよう」
ルシュが俺が起きている事に気付いて挨拶してくる
「おはよう…」
声に力が入らない
ルシュが俺の方に歩いてくる
その途中で俺の異変を感じ取ったのか足早にベッドまで駆け寄って来る
「どうしたの、ヨウヘイ…?」
ルシュが心配そうに声を掛けてくる
「多分、風邪をひいた…と思う」
こちらの世界に来てからこういった形で体調を崩した事は無かった
体感風邪だと思うが…
「風邪…?」
ルシュが首をかしげ、俺の手を握る
「熱い…」
ルシュの表情が見る見る曇っていく
「大丈夫、そんな大した病気じゃないよ」
ルシュの表情の曇りを見て、俺は慌てて声を掛ける
「本当に?動けないんだよね?」
ルシュがとても心配してくれている事が分かる
「う~ん、多分…」
この世界に風邪薬があるのか分からない
病院も無いし、どうしたものか
「ゆっくり寝ていれば治ると思うよ」
ルシュを安心させる為に声を掛ける
「この世界にも薬があれば良いんだけどな…」
俺は思っていた事をそのまま口に出す
「ヨウヘイの病気が治る薬があればいいんだよね…
探してくる」
そう言ってルシュはその場で部屋着を脱ぎ始めた
俺は慌てて反対を向く
「ルシュ、そんな焦る事はないよ。
今日はゆっくりしてても…」
「ダメ」
俺が言い終わらない内にルシュに制される
ルシュがここまで強く主張する事は今まで殆ど無かった
その言葉に俺は気圧されて黙ってしまう
1分としないくらい経ってから
「待っててねヨウヘイ、ゆっくり休んでて。
わたし、行ってくるから」
素早く着替えたルシュが俺に声を掛け、荷物を持つ
「分かった、気を付けてな」
不安は拭いきれないが、ルシュに任せる事にした
「うんっ」
ルシュは俺に頷き、足早に部屋から外に出ていった