表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天蓋花  作者: 神綺
1/1

始まり【1】

普段は少年漫画を描いてる人間が小説にトライしています。

どちらかというと小説より漫画のシナリオという感じです。

色々と至らない部分も多いと思いますが温かく見守ってくださると幸いです。

挿絵(By みてみん)


「はっ、はぁ……」

少年は真っ白な雪に覆われた世界に独り、足を進めていた。

ザク、ザクと、彼の重くなった身体は、足元の雪を掘って行く。

『早く、"見つけて"来るんだ――……』

優しく、頭の中で木霊する老人の声。

「……ッ……!」

少年は自身の腹の傷を見て、顔を顰め、痛みを耐えるように横にある塀に寄りかかった。

『お前なら、必ず見つけ出せる』

少し休み、

「早くっ……、見つけなきゃ…、な……」

と呟き、痛みと寒さで気を失いそうになりながら、また彼は進みだした。


黒鳳蝶くろあげは――……、お前なら、必ず見つけ出せる筈だ。"アレ"を、一刻も早く、見つけ出して来て欲しい」

優しく地獄の長――閻魔えんまは言った。

「はい」

黒鳳蝶と呼ばれた少年は、まだ11、12歳くらいであろうか。黒髪に金眼のまだ少し幼げな少年は静かに、目を瞑りながら頷いた。

「ならば已むを得まい、こんな状況ではあるが、お前に"大人の儀"を受けてもらおう」

「大人の、儀……」

少し目を見開いて、黒鳳蝶は息を呑んだ。

森がさやぎ不気味さを感じながら、閻魔や村人たちに続き、祭壇へ向かった。

村人たちは木材や香などを用意し、祭壇に飾る。そして祭壇の周りに集まり、神に祈るように手を合わせていた。


「<あちら>へ、子供の姿のままで行かせるのは危険過ぎます。強い霊力を持った人間と共に在る訳では無いのですから。――少しだけ、貴方の力を解放しましょう」

綺麗な青髪をした少し気の強そうな女性――青藍せいらんは言った。


青藍は村人たちと結界をはり、まじないを唱える。

すると黒鳳蝶はすう、と16、17歳ほどのカラダになった。

黒鳳蝶は不思議そうに自身の手や器を見た。


「これで条件を満たせば、貴方は力を少し引き出せる筈。その<条件>は、その<時>が来た時に解るわ。でも――覚えておきなさい、黒鳳蝶。貴方は完全な"大人の儀"を受けた訳では無いことを。」

キッと黒鳳蝶を見て、青藍は言った。

「はい……」

黒鳳蝶は頷いた。


「では、現世に行ける結界を解――……」

と閻魔が言いかけた途端――シュッ、と<何か>が飛んで来る。

閻魔はそれを回避する。赤い蛇がボトリ、と彼の前で落ちた。

それと共に多くの村人の悲鳴が聞こえて来た。

「――ッ……、ついに、ここまで<彼>が来ましたか……!?」

青藍が村人の悲鳴を聞き、慌てその場から離れようとする。

「青藍ッ! 結界をそのまま解きなさいッ……!」

閻魔は青藍を宥め、青藍はその場にとどまった。

未だ絶叫が響く。


閻魔に従い、そのまま冷静に結界術を読み解く青藍。結界が開き出す。そんな時――他の赤蛇によりガッ、と彼女は攻撃を受けた。

「――アッ……!」

青藍は腕を噛まれたらしく、そこから血が流れ出していた。

「青藍様っ……」

黒鳳蝶は慌てて青藍の元に行こうとする。しかし

「黒鳳蝶ッ、私に構わず行きなさいッ……! 貴方は、"役割"の真っ当を、あの<獣>をッ……!」

と、彼女は黒鳳蝶に叫び、ガクン、と膝を地についた。


そんな時、目の前に赤茶の髪に赤眼の青年が現れた。

「煉獄ッ……!」

青藍、黒鳳蝶共々、彼の名を呼んだ。

「黒鳳蝶ッ! 行きなさい!!」

青藍は黒鳳蝶に更に強い命令口調で言い、よろっと立ち上がり、黒鳳蝶を煉獄から遠ざけようとする。

「行かせんよ……」

煉獄は肩に乗せた赤蛇を撫でながら、呟いた。

「――ハァッ……、どうかしら? 私だって伊達に閻魔様の右腕として働いているわけじゃないの。煉獄、貴方の相手は私がするわ!」

先ほどの攻撃での痛みがあるだろう、彼女は一息吐き、煉獄に言った。

強く言ったものの、青藍は彼に少し怯えながら黒鳳蝶の前に出た。


※本来、≪天蓋花≫とは、『てんがいはな』または『てんがいばな』と読みますが、この話のタイトルはどちらともなく、響きがいい『てんがいか』と読んで下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ