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鬼哭  作者: ツヨシ
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気がつくと、目の前に顔があった。


紫苑だ。


「あっ、起きた起きた」


見れば魁斗が紫苑の後ろから覗き込んでおり、飛燕はさらに後方でがっくりと肩を落としてうつむいていた。


「おう、あんちゃん。久しぶりだな。また飛燕がやらかしたんだぜ」


なんということだろう。


数ヶ月ぶりに再会したバードウォッチングで違う山に入ったというのに、またも飛燕といっしょに飛んできてしまったのだ。


狭いといわれる日本でも、人と人とが再び偶然に出会うには、充分すぎるくらいに広い。


ましてや人里はなれた山の中で、しかも飛燕がちょうど飛ぶ瞬簡に出くわしてしまうなんて。


確率的にはどのくらいなのだろうか。


細かい計算は出来ないが、とてつもなく低いことは確かだ。


「めんぼくない」


笑って飛燕を見ていた紫苑が言った。


「もうこうなったら、あんちゃんとあたいたち、運命と言うかなんと言うか、とんでもない繋がりがあるのかもね」


「そうそう。もう俺たちの仲間になったら、どうだい」


「それがいいわ」


「ラスボスにも通用する、フラッシュの術という必殺技もあるしよ」


「そうそう」


はしゃぐ二人の間に入って、飛燕がこれ以上ないほどの真顔で言った。


「こうなってはしかたがない。清武さん。またいっしょに来てもらいますよ」


「……」


「そうそう、それがいいわよ」


「話は決まったな。それじゃ、行くぜ」


右と左から魁斗と紫苑に肩を組まれ、清武は引きずられるように歩き出した。


左右の身長がまるで違うので、とても歩き辛かったが。


清武は思った。


今度会社を無断欠勤したら、さすがに首になるだろうと。


しかし清武は、三人の顔を見ていると、なんだかそれでもいいような気がしてきた。



          終

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