30
魁斗が再び戦鎚を振り上げ振り下ろす。
そしてもう一度。
みるまにサラマンダーが次々と倒されてゆく。
――よくもまあ、枝に当たらないもんだ。
木が生え並び、枝が密集しているというのに、魁斗の戦鎚はそれらを見事に避けてサラマンダーを的確に攻撃している。
「でれ、私もいきますか」
そう言う飛燕の槍も、ものすごく長くなっていた。
飛燕は枝を伝って魁斗と反対方向に移動すると、飛び降りた。
そして魁斗へ突き進むサラマンダーの後方に立った。
「それっ」
飛燕が長くなった槍でサラマンダーを突き刺す。
一匹が倒され、そのまわりのサラマンダーがそれに気づいた。
方向転換をして飛燕に襲い掛かるが、たどり着く前に槍の餌食となっていた。
「じゃあ、あたいも」
紫苑を見ると、彼女はナイフをサラマンダーに向けて投げていた。
ナイフは一匹の首の辺りを貫通して、地面に突き刺さった。
清武は、ナイフが鎖のようなものとつながっていることに、気づいた。
その端を紫苑が持っている。
紫苑が無造作に鎖を引くと、ナイフは地面から抜けて真っ直ぐ紫苑の手元に戻ってきた。
それはまるで、ナイフに意志があるかのようだった。




