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清武がそんなことを考えていると、トカゲがその歩みを止めた。
そしてそのまま燃えはじめた。
――えっ?
大きなトカゲの身体よりもさらにひとまわりどころかふたまわりは大きな炎が、その身体から吹き出している。
そしてそのまま巨体に似合わない素早い動きで、こちらに向かってきた。
「あれ、サラマンダーじゃないの」
「ちげえねえ。サラマンダーだ。伝説の幻獣とこんなところでご対面とは、なんだか嬉しくなってくるぜ」
飛燕が聞いてきた。
「清武さん、木登りできますか?」
「大丈夫です」
清武は大学に入るまでは、けっこうな田舎に住んでいた。
木登りが出来ないと、まわりから馬鹿にされるような田舎だ。
その木登り集団の中でも、清武みんなから木登り清ちゃんと呼ばれ、一目置かれていたほどだ。
もう何年も木登りをしていないが、問題はないだろう。
清武はあたりを素早く見渡すと手ごろな一本を見つけて、するすると登り始めた。
「あら、すごいわね」
「ほんと、たいしたものだぜ」
「よかった。これで心おきなく戦える」
そうこうしているうちに、サラマンダーは直前まで迫っていた。
「あちっ」
「やっぱ、熱いぜ」
「これはたまらん」
清武が上から見下ろしていると、三人は驚くほど速い動きでサラマンダーをかわしてはいるが、すでに何十匹といる炎のトカゲに囲まれている状態だった。
おまけに火の勢いが激しいために、手持ちの武器で攻撃できるほどサラマンダーに近づくことが出来ないでいた。




