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「いいから二人とも、もうやめなさい」
二人ともその一言で言い合いをやめた。
顔はまだむくれてはいたが。
「それじゃあ、朝食だな」
飛燕がそう言い、昨日と同じように準備を始めた。
紫苑は肉をさばきだした。
平地よりは肌寒いとはいえ、肉は夏のこの時期に一晩平温の中に置いていたのだが、大丈夫なのだろうか。
清武はそれが気になったが、三人はそんなことはまるで頭にないように見えた。
簡易バーベキューは、滞りなく進んでゆく。
雉と兎は全て四人の胃の中におさまり、大きな猪も大半は食ってしまった。
残った肉を飛燕が袋の中につめると言った。
「それでは行きますか」
三人が申し合わせたように同時に歩き出し、清武がそれについて行った。
しばらくはなにもなかったが、先頭を歩いていた魁斗が、突然その歩みを止めた。
「どうしたの」
「なにか来るぜ」
清武にはなにも見えなかったが、三人が無言のまま前方を見つめているので、それにならうことにした。
そのまま動くことなく見続けていると、なにかが現れた。
木々の間を縫うように進んでくるもの。
一つや二つではない。
それは一言で言うと、大きなトカゲだった。
コモド島のコモドドラゴンにも似たその風貌。
大きさもそのくらいはあるだろう。
そしてその皮膚は、赤かった。
――トカゲかあ。確かに一般人にとっては大きなトカゲの大群はかなりの脅威だろうが、あの三人には通用しないんじゃないかな。




