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「でもいい収穫だな」
「でしょでしょ。苦労したんだから。兎もすぐに首をねじるつもりだったんだけど、あまりにももふもふなもんで、思わずなでまわしてたら逃げられちゃって。もう一度捕まえるのにちょっと手間取ったわ。二度と逃げられないように速攻で首ひねってやったけど、これなら最初からひねっとけばよかったわ」
顔だけ見れば、十四、五歳に見えるとびきりの美少女の口から出てきているとはとても思えないセリフだが、清武はそのままスルーした。
我が身の健康と安全を考慮して。
「それはご苦労さん」
飛燕は慣れているのか、全く気にしていないようだ。
飛燕はいつの間にか石を両手に持っていた。
それを打ち合わせると、枯葉に火がつき小枝に燃え移った。
「あら、もう火をつけたの。それじゃあ急いでさばかなきゃ」
紫苑はナイフを取り出して、雉と兎をさばき始めた。
その手際のよさは、一流の料理人を見ているかのようだった。
さばいた肉を次から次へと鍋の上にのせてゆく。
「味付けはこれだけよ」
手を握り開くと、白い粉がその中にあった。
まるで手品だ。
どうやら塩のようだ。
肉にふりかけた。
肉が焼ける音とともにいい匂いが漂ってくる。




