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実にさわやかな笑顔である。飛燕が言った。
「清武さん、ご無事でなによりです」
「いえ、こちらこそ」
「まあ、あいさつはそのへんでね。ところで中ボスは出てくるのかしら?」
紫苑が似ている方向を見て、魁斗が言った。
「出てくるんじゃねえか。ひょっとしたらバグかなんかで、出るに出られなくなっているのかも知れねえぜ」
――ゲームじゃないだろう。
清武は心の中で突っこみを入れた。
全員で森の先を見ていると、先ほどの化け猿が現れた。
そしてその数がどんどん増えてゆく。
「中ボスが出てくるのかと思ったら、雑魚キャラがまたのこのこ顔出してきやがったな」
「いや、ちょっと待て」
「なんか様子がおかしいわよ」
化け猿は集まったかと思うと、なんと近くにいるもの同士で合体を始めた。
そして次々と合体を繰り返してゆき、とうとう一匹の大猿となった。
顔はタツノオトシゴもどきのままだが。
その身長は十メートルを軽く超えそうだ。
「こんだけ木の生えているところであんなにでかくなって、ちゃんと動けんのかよ」
「どちらにしても倒すのは一匹でいいようだな」
そう言うと飛燕は、無造作に槍を投げた。




