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 朝、さわやかに起床し、下着を着替えて食堂へ向かう。

 パンに焼いたベーコン、サラダにコーヒーという、メニューも味も元いた世界に遜色ない食事を取る。

 ランドリーサービスがあるか聞くと、ある、ということなので、下着類を出しておく。

 他の宿泊客が出発し始めたので、ポーション鞄を持って出発。

 まずは商人ギルドへ向かう。


 もしかしてまだ開いてないんじゃないか、とも思ったが、さすが商人ギルド、すでに営業していた。

 早速、ポーションの買取をお願いする。


「いらっしゃいませ、どのようなポーションをお売りになりますか?」


 昨日とは違う人だ。少しやせ気味で、ちょっと髪の将来に心配な気配を漂わせる青年だ。

 俺はポーション鞄から、Fランクの薬を出しながら聞く


「怪我治療、病気治療、状態異常回復などですが。この町では、どのランクに需要があるのでしょうか?自分も薬師として、どの当たりをターゲットにして作ればいいか、参考にしたいと思いまして」


 そうですねえ、と職員は首を軽くかしげる。


「怪我治療薬に関しては、FからEまで幅広く需要がありますが、製作者もそれなりにいます」


 職員さんは、説明を続ける。


「状態異常回復薬は、冒険者は欲しがりますが、住人はそれほど数を必要としていないので、需要は大きくないです。病気治療薬は怪我治療薬と同じように幅広く需要がありますが、怪我治療薬ほど作れる薬師が多くないので、いつでも品薄気味です」


 なるほど。俺はどの薬も作る手間は一緒だが、他のチートしてない薬師からすれば、材料やら工程数やら必要精度やらに違いがあるんだろう。


「ランク的に求められるのは、やっぱりF、Eですか」


 職員さんは、うーんと唸る。


「いえ、D以上を求める方は、特に病気治療薬などで多いのですが、D以上は個人が薬師に直接発注する形が多いので、ギルドに納品されることはほとんどありません。冒険者のドロップアイテムとして、冒険者ギルド経由で回ってくるくらいです」


 ほうほう。


「この町ですと、Dは稀に出回る、Cはまず見かけない、という感じですね。かくいう私も、Cの怪我治療薬を一度だけ見たことがある、程度です」


「ははあ、なるほど」

 

 Cの手持ちは3本あるが、出すの絶対駄目だ。地方中核都市のギルド職員が、今までに一度見たことがある、なんてレベルの品を出したら、大騒ぎになる。

 Dもやめておいた方がいいな。

 俺はF15本、E15本を机に並べる。

 それを見て、職員さんが少し微笑んで言う。


「おお、Eが結構ありますね。助かります」


 会計は締めて金貨18枚。

 今回はすべて口座に入れて貰う事にした。



 商人ギルドを出ると、すでに昼近くになっていた。

 どこかで飯でも食うかと考えながらも、足はつい歓楽街の通りへと向いてしまう。

 さすがに午前中からは開いてないだろうが、昨日聞いた娼館の位置を確認しておくのもいいだろう。

 歓楽街につくと、通りには結構屋台が出ていて、食事している人も多くいた。

 客層老若男女様々だ。割合としては女性客の方が幾分多い。

 ちょうどいいと、俺は屋台で昼食をとることにした。

 

 近くの屋台で、野菜たっぷり焼きそばみたいなのと、おそらくジュースであろうものを頼む。

 料理の名前はわからない。

 同じ屋台でおばはんが食ってるのを見てうまそうだったから、「あれと同じもの」、と注文してみたのだ。

 路上に机と椅子がいくつもおいてあるので、その一つに座って注文が来るのを待つ。

 ほどなく、少年が料理を持ってくる。

 少年とはいっても、お姉さま方のショタ心をくすぐるようなのでは、まったくない。

 身長があり、ぼーっとした印象だ。

 代金はこのタイミングで払うようなので、値段を聞く。


「石貨8枚」


 知らない単位が出てきた。石貨はないので、銅貨を1枚出す。

 少年は、ごそごそとポケットを探ると、石貨らしいものを2枚出してきた。

 俺はそれを手で制止し、「とっとけ」というジェスチャーをする。

 少年は初めて、ニヤァ、と嬉しそうに表情を崩した。


「女の客が多いな、ここらで働いてる人か?」


 俺が聞くと、少年は頷いた。

 いくつか質問をして分かったことは、屋台で飯を食ってる人たちは、男も女も、だいたいがここらで働いてる人達らしかった。

 掃除や洗濯を仕事にしていそうな人、用心棒っぽい人、受付でもやっていそうなキッチリした服を着た人、様々だ。

 娼館の人たちは昼前から準備を始め、昼食が終わる頃、店を開くのだそうだ。

 ずいぶん早くから開くな、客来るのかなと思ったが、周囲に気を配ると、俺と同じようにやる気に満ちたおっさんや兄ちゃんが、何人かいた。

 4人でテーブルを囲んで食事をしながら、今日はどこの店に行くとか、誰々ちゃんがかわいいとか言っている連中もいる。こういう雰囲気、大好きです。


 食事を終えた後、歓楽街の歩きながらシーゴット、シュリンプフィールド、ロウクワットの場所を確認していく。

 ロウクワットを確認した後、手前に戻っていると、シュリンプフィールドが店を開けたのが分かった。

 開店のお時間になったようだ。

 そこで、期待でやや早足になりつつ、シーゴットへ向かう。

 異世界に来て、初めての娼館、少々高くても高級店に言ってみるべきと考えたからだ。


 通りから見たシーゴッドは、2階建ての白い石造りの建物だ。

 金色の文字で書かれた「シーゴッド」の看板が、掲げられている。

 入る直前、ちょっとドキドキしてきた。

 

「いらっしゃいませ」


 扉を押し開けて中に入ると、身形のいい兄ちゃんが声を掛けてきた。


「何かお飲みになりますか?」


 ロビーには、テーブルや椅子が並んでいる。

 テーブルの上にはメニューらしきものが置いてあった。

 どうするか少し迷った後、座ることにした。

 何か飲みながら、周囲の様子を参考にしよう。

 メニューを見ると、アルコール、ジュース、コーヒーの類が並んでいる。

 俺は、コーヒーを頼むことにした。

 金額は石貨8枚。さっきの昼飯と同じ金額だ。


「じゃあ、コーヒーを一つ」


「畏まりました」


 兄ちゃんは一礼して去っていく。

 ほどなく、娼館で働くには若すぎると思われる少女が、コーヒーを運んできた。


「こちらになります」


 少女は片膝をついて、トレイの上からコーヒーを机に置く。

 俺は礼を言って、銅貨を1枚渡す。

 少女は受け取ると、お釣りの石貨を2枚返してよこした。


「・・・・・・」


 しかし、少女は片膝をついたままで、こちらを、何か期待するようにじっと見てくる。

 思い当たる節があったので、お釣りの石貨を渡してみる。チップだ。

 少女はにっこり笑い、礼をして去っていった。

 ああやっぱり。ここはチップの文化があるところなんだ、と思った。

 と、そこで気が付いた。宿で枕銭を置いて来ていないことに。


(やばいなー、チップがあるんなら、枕銭も必要なんだろうなー。けど貴重品は置いてないしポーション鞄は持ってきてるし問題ないか。いや、けど今日なんか顔合わせ辛くなったな。部屋の掃除とかして貰えてなかったらどうしよう)


 日本人である太郎改めタウロは、チップに詳しくない。

 海外旅行に行った時に経験した程度だ。


(後で誰かに相場とか教えて貰おう。それにチップ用に石貨も貯めておいた方がいいな)


 心の整理を取り合えずつけ、コーヒーを飲みながら、周囲に気を配る。客も何人か入ってきていた。

 ロビーの奥一面は、階段状になっており、そこに女性が十数人座っている。

 タウロや他の客のいるエリアは少し照明が落としてあり、反対に女性の座っている場所は照明を強くしてある。

 こちらからは女性がよく見えるが、向こうからは見えにくい、という形だ。

 女性はそれぞれ胸元にプレートをつけており、プレートには数字が記されていた。

 タウロのように椅子に座って飲み物を頼んでいる者は、まだいない。客たちは、立ったまま女性の方を見ていた。

 やがて客の一人が、さっきの身形のいい兄ちゃんを手真似で呼び、なにか囁いた。

 すると兄ちゃんは雛壇の方へ歩いて行き、女性の一人を呼んだ。

 客はそれを見て、雛壇脇のカウンターへと向かう。支払いをしているようだ。

 雛壇から出てきた女性がカウンターの客のところに行き、腕を組み、さらに奥の階段を二人で上っていった。


「なるほど、大体理解した」


 俺は独り言ちると、コーヒーを飲み干し立ち上がった。

 ぎらぎらとした目で雛壇を見回す。

 肩に掛かるくらいの黒髪をした、痩せ型の女性にすることにした。

 やさしそうで綺麗系の顔立ちをした、推定年齢25歳くらいの女性だ。

 俺は兄ちゃんのとこまで歩いていって、女性の番号を告げる。

 兄ちゃんが雛壇へ行って声をかけ、俺の指名した女性が立ち上がる。

 兄ちゃんが俺のほうを見て、(彼女で間違いはないか?)と目で聞いて来る。

 俺は頷くと、カウンターへ向かって歩き出した。

本作品の第6話以降は、R-18ガイドラインに抵触致しました。

そのため、第6話以降を一端削除し、並行して改稿作業を進めております。


削除した作品につきましては、現在、ノクターンノベルズに掲載しております。

もしよろしければ、R-18作品でである事をご考慮のうえ、下記URLをご参照ください。


お読みいただいている皆様には、大変ご面倒をお掛けしておりますが、よろしくお願い致します。


http://ncode.syosetu.com/n8321do/


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